MySword,MyMaster
Act-1
#1
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、裕一」
グレーシャは、その人生を既に彼――束裕一に捧げて久しい。
もともとグレーシャは戦争孤児だった。どことも知れない国で何が理由なのかも分からない戦争に巻き込まれ家族を失い、蹂躙されるかあるいは殺されるか、はたまたもっと陰惨な未来をたどるかのどれかだった。
その未来を変えたのが当時十歳にして既に天才魔術師であった裕一と、その父にして先代最強の『魔術使い』、束千斬だ。
以後、グレーシャは彼らの運営する聖杯研究機関のメンバーであり、そして早逝した千斬の後を継いだ裕一の傍使えとして生きてきた。傍使えの役職は事実上の名誉職、というかメイドのようなものであり、大した権力は無いのだが。
裕一はうぅん、と唸ると頭を抱えた。
「弱ったなぁ……なんか罪悪感を感じて仕方がない……これから僕は君に、『伝承保菌者』たる我が家に代々伝わる聖遺物を預け、そして架空座標に存在するこの聖杯戦争の舞台――鏡面界に放り込むわけだ。いやだなぁ、こんなに僕に尽くしてくれる娘を権力に物を言わせて従わせるとかただのパワーハラスメント……父さんとまるで同じだぁ……」
「つべこべ言ってないで、さぁ、モニタールームに急ぎましょう。私も行かなければいけません。裕一が様々なことを調べてくれて、色々なことを案じてくれるのはとても嬉しいです。けれど……私にとって一番嬉しいのは、あなたが何の迷いもなく、私を『剣』として使うこと」
それは、本心からの言葉。
グレーシャは剣。
束の家に伝わる『聖剣』の様に、裕一の未来を切り開くための、剣。
自分の人生が一度確実に終り、しかし再び始まったあの日に、『最初に』手を差し伸べてくれた、唯一無二の、大好きで大切な男の人。
彼に救われた命。彼の為にそれを使うのは、当然のことで。そして、グレーシャにとっては、至上の願い。
――ああ。
――もしかしたらこれを、聖杯は選んだのだろうか。
彼女は、内心でそう思案する。漸く、納得が自分の中で行って、覚悟も、決まったように思えた。
「……分かった」
そして同時に、裕一の中でも何かが吹っ切れたようだった。
顔を上げた彼は、いつものようなおどおどした、およそ『騎士王の末裔』には相応しくない表情ではなく。
「いこう、グレーシャ……いいや『雪華』。僕の剣。僕の刃。僕の従者。マスターとして君は鏡面界へと向かい、間接的に僕の刃を操作しろ。全ての敵を切り伏せ、そして――」
まさしく、王。
この聖杯研究機関……正式名称、『現代円卓騎士団』のリーダー。
現代の、『アーサー王』。
「僕に、
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