Act-0
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らしさとは正反対。何せセイバーは、ぴったりと少女を追随し、後退したはずなのにも拘らず、まるでその距離が開いていなかったのだ。
強い――内心でそう呟きながら、彼女は背後の空間を揺らめかせる。二丁の弓が顕現し、自動的に矢を絞ると、射出。豪速を以て騎士王に迫る。
大地に打てば、その地を残らず抉り取る――長弓の一撃としては少々信じがたい威力を秘めたそれは、果たしてセイバーに直撃。彼を大きく弾かせることに成功した。矢が当たった彼の両肩の鎧は大きく損傷、し、――――
「……!」
なんてこと。アーチャーは、内心で絶句した。
抉り取った、と思ったセイバーの鎧が、次の瞬間には『元の姿』へと還ったのだ。傷一つない、という表現は正しくない。何故なら最初からセイバーの鎧は傷だらけだったからだ。
しかし。しかしだ。これは信じがたい。破壊と傷の度合いが違う。この回復力はあり得ない。まるで、『この傷ついた姿以外には決して成れない』とでも言わんばかりだ。
「ははっ……そうで無くてはなぁ、聖剣使いィッ!!」
ぶん、と轟音を立てて、ランサーが介入。巨槍がセイバーを打つ。しかしセイバーはまるで屍人か何かの様に、意に介したそぶりも見せず立ち上がる。受けた傷は、その間に完全に修復されていた。
よほど彼と契約したマスターが優秀なのだろうか。だとしたら凄まじい脅威だ。
「騎士の王よ……貴様は真、我が槍の真の姿を見せるにふさわしき英雄だな! 一日の内にアーチャーと、そして貴様という、その『英雄』二人とも刃を交えることができた事、我が大神に感謝せねばなるまいて!! ああ、加えてそのどちらもが『かの国』の者……もはやこれは運命だ!!」
高笑い。
ランサーの猛攻。穂先を以てセイバーの剣と打ち合う。柄を回転させ、弾く。そのまま柄ごとスイング、騎士王を打つ。しかし騎士王も倒れない。斃れない。壊れない。無限の動力機関であるかのように、動く、動く、動く――――
――今のうちに、退却するべきですわ。
アーチャーは霊体化する。アーチャーは先ほどランサーにも言って見せた通り、ある程度は白兵戦にも自信がある。が、それはこの二人の戦場に切って入るほどではない。その行いは勇気ではなく蛮勇だ。命取り、という言葉こそが相応しい。
今も昔も、アーチャーはその場の栄光の為に戦っているのではない。
それを捧げる主がいてこそ。
そしてアーチャーの少女が戦場を離れたことにも気付かず打ち合っていたランサーとセイバーの戦局にもまた、少しの変化が。
既に剣戟の応酬は二百合を超えた。ランサーの内心には、これほどの強者と戦えることへの感動と戦慄が渦巻く。
だが――それは、彼の感情だ
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