Act-0
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私が弓だけの女と思わない事でしてよ。見ての通り、白兵戦も経験済みです」
冷たい笑みを浮かべて、銀色の弓兵は刃を振るう。槍の男は柱の淵に立つと、踊るような動作で橋に乗り込む。無言で槍を構える男。槍と剣での激突に持ち込むつもりか。
ふっ、と短い息を吐き、槍の男は両手を突き出す。握られた槍、その長大な穂先が、女の胴を真っ二つにするべく、恐ろしい速度で閃いた。
しかし女もさるもの。あの長距離から男をめがけて弓を撃っていたことを考えれば、その視力と観察眼は一線級だ。尽く槍を白刃で裁き、徐々に、徐々に距離を詰める。
黒鎧の女に詰め寄られ、槍の男は一瞬目を見開いた。男の槍は長大だ。弓兵と槍兵では槍兵の方に白兵戦においては分があるものの、ある一定以上の距離に近づけば、槍は脅威となりにくい。そのことを理解して、あえて距離を取らずに肉薄する――その戦術に敬服したのだろう。
そして女の刃は、男のむき出しのボディスーツに向けて突き出され――
「あら」
「すまんな。特別製なのだ」
がいん、という不快な音と共に弾かれた。
男は隙を逃さず槍を引き戻すと、柄を振り回し女との距離を開ける。バックステップでさらに距離をとると、仁王立ちの姿勢をとる男。
女は眉を顰めると、
「私の武装が弓と知って、なおも距離を開けるのですね、槍兵」
笑った。
だが彼女も、もうすでに知っている。目の前の男に、生半な矢は、どうやら届かぬらしい、ということを。
「貴様との武闘もなかなか悪くは無かったのだがね。生憎、私の妻は浮気に煩いのだ」
「あら、戦場で惚気ですか?」
「当然だ。士気が上がる。貴様のような強者との戦いでは特にだ、弓兵」
軽口をたたき合う間にも、お互いの緊張感はまるで緩まって等いない。次の相手の一手を予測するべく、互いの青い瞳を動かして、相手の情報を一つでも多く拾おうとする。
動き出したのは、ほぼ同時。
順当な技は、相手には通用しない――そのことを、どうやら悟ったらしい。
だからここからは、『順当ではない』戦い。
超常の存在――この、『聖杯戦争』を開催するにあたって、代理戦争を繰り広げる騎士として呼び出された、歴史に名を刻み、そして死した英霊たちの分御霊……『サーヴァント』としての戦い。
男……ランサーは、その槍を引き絞り。
女……アーチャーは、背後に無数の揺らぎを出現させた。
宝具。
サーヴァントたちが持つ、生前の偉業や伝説を、武器や技として形にした、無限の幻想。
ランサーの場合はその名の通り槍として。アーチャーの場合は、投擲武器の形で現れることが多
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