181部分:バルドの旗の下にその四
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バルドの旗の下にその四
軍は瞬く間に城のほぼ全域を制圧した。そして内城へと入って行った。
「・・・・・・終わりだな」
城主の間で城を預かっていた将軍が言った。白の軍服、やはりバーハラの者である。
「ほとんどの兵が戦いを止め投降しております。この内城にも既に侵入しておりこの部屋に来るのも時間の問題かと・・・・・・」
壮年で髭を蓄えた参謀が言った。その言葉が言い終わらぬうちに扉が開かれた。
二人入って来た。一人は髪を立たせた細い目の長身の青年でありもう一人は波うつ髪を持つ小柄な少女だった。
「貴方達は・・・・・・。そうですか、これ以上の戦いは無駄ですな」
城主はそう言うと腰の剣を棄てた。そして片膝を折った。
「そうか」
青年は城主を立たせた。そして何やら話しはじめた。
ーメルゲン城ー
ミレトスから帝国本土をつくべくメルゲン城に集結した解放軍の士気は天に届かんばかりであった。鍛え抜かれた六十万を越す大軍は武具、兵糧共に万全の補給を受けセリスの命を待っていた。ペルルークへ向かう西の城門の前は軍で埋め尽くされ色とりどりの旗が整然と並べられまるで万華鏡のようであった。城壁の上にはシャナン、アルテナ等神器の継承者をはじめとして解放軍の諸将が並んでいた。
「やっぱり緊張するね」
セリスは城壁を登る階段を前にして張り詰めた顔で横のオイフェに言った。
「はい。ですが皆待っているのです。セリス様が我等の悲願に対して号令を発せられるその時を」
珍しい事に拳を強く握り締め熱い口調で言葉を発している。
「そうだね。よし、行こう。城壁の上に」
「はい」
二人は階段を登っていった。光が段々大きくなりその中に出た。
城壁の上に出前に現われた。雲一つ無い晴れ渡った青い空の下六十万の兵もそれを率いる将達も静まり返った。
兵士達を見る。どの者もセリスに視線を集中させ耳を傾けている。
気負されそうになる。だがこれに負けては到底帝国など倒せないと思った。気をさらに張り詰めさせた。
「皆」
隅々にまでよく響き渡った高い声が響いた。息を吸い込み再び声を発する。
「遂に時が来た。グランベル帝国のくびきから民を救う時が」
さらに続ける。
「民衆を虐げユグドラルを暗黒に包んでいる帝国はクルト王子を暗殺しその罪を我が父シグルド、我が祖父バイロンに着せ大陸各地に戦乱を起こし多くの命を奪った。そして我が父を死に追いやるとバーハラ王家を滅ぼし王位を簒奪すると皇位を僭称した。その後の悪逆非道は皆も知っているとおりだ」
一陣の風が吹いた。セリスの青い髪が風に揺れた。
「だがそれも終わる時が来た。今から私は帝国を討ち民と大陸に平和と幸福を取り戻す為グランベルに向かう」
右手を上げた。翼の様に広げられた。
「さあ行こう。光を
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