第三十二話 太子の焦燥その九
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「是非」
「そうですか、しかし」
「しかしとは」
「今あの方からも様々な霊薬、妙薬を頂いていますが」
「太子からもですか」
「私の身体は日に日にです」
まさにというのだった、マリーに対して。
「自分ではそう思います」
「そうですか」
「はい、このままでは」
「どうにもですか」
「父上達の様に」
先の三代の王達だ、マイラも彼女自身の親族のことを思った。
「若いうちに」
「それは」
「それもまた神の思し召しなら」
それならというのだ。
「私に言葉はありません」
「そう言われますか」
「為すこともありません」
言葉だけでなく、というのだ。
「従うだけです」
「そう思われていますか」
「人の運命を神が全て定められているとは考えていません」
それは新教の中でも最も過激とされる考えだ、純粋な旧教徒であるマイラが至る筈もない考えだ。同じ新教徒でもあるマリーにしてもだ。
「ですが」
「それでもですか」
「はい」
まさにというのだ。
「神が定められたことなら」
「従われて」
「召されます」
その神にというのだ。
「そうなります」
「そう言われますか」
「はい、ですが貴女は何故」
「ユニコーンの角を贈ったことは」
「私にどうしてそこまで」
「お姉様だからですが」
これがマリーの返事だった。
「だからですが」
「姉妹だからですか」
「そうです」
あくまでとだ、マリーはマイラに述べた。
「だからこそです」
「私にこの様なものを」
「そうさせて頂いたのですが」
「そうですか」
「いけませんか」
「いえ」
マイラはその完全に白くなっている顔で妹に答えた。
「有り難く受け取らせて頂きます」
「そうして頂けますか」
「喜んで」
「それは何よりです」
「このお薬もセーラ、マリアから」
「二人にも協力してもらいました」
言うまでもなかった、マリーにとってこのこともまた。
「手に入れるにあたって」
「そうですか」
「二人がいてくれたので」
だからだというのだ。
「手に入れることが出来ました」
「そうだったのですね」
「お嫌ですか」
「いえ」
マイラはその感情は否定した。
「ただ。貴女はいつもですね」
「二人がいるというのですか」
「国は離れても」
「やはり心はです」
それはというのだ。
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