第三十二話 太子の焦燥その八
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「お元気でいて欲しいのです」
「しかしですね」
「ロートリンゲン家には国を渡さない」
「盟友同士であろうとも」
「それでもですね」
「加減です、このことを強く思っています」
まさに心から、というのだ。
「私は、ですがお姉様のお顔の色は」
「まさに日増しにですね」
「悪くなられていますね」
「白くなられ」
「やつれていっていますね」
「あのままではです」
嫌な予感を感じつつだ、マリーは言った。
「父上、叔父上それに」
「弟君であられた元王」
「その方も含めてですね」
「三代の王の様に」
「近いうちに」
「そうですね、私からもです」
マリーはマイラ、姉である彼女を心から想いつつ決断した。そしてその決断を彼女の側近達にも話した。
「お薬を送りましょう」
「マイラ様に」
「そうされますか」
「はい」
こう答えもした。
「そうしたいです」
「ではすぐにですね」
「妙薬を、ですね」
「お姉様にお送りしましょう」
こう言ってだ、マリーは実際にだった。彼女の財産から出した金で妙薬を手に入れてマイラと会った時に自ら差し出した。そのうえで姉に微笑んで言った。
「お飲み下さい」
「薬ですか」
「気付け薬です」
どういった薬かも話した。
「お顔の色が今一つと思いまして」
「だからですか」
「お口にされて下さい」
こうマイラに言うのだ。
「どうか」
「そうですか」
「はい、受け取って頂けるでしょうか」
「わかりました」
一呼吸置いてからだ、マイラは妹に答えた。そのうえで彼女が差し出した薬を受け取ってそのうえでまた言った。
「それでは」
「葡萄酒にでも入れてお飲み下さい」
「そうさせてもらいます」
「きっとよくなります」
「よくなる、ですか」
「はい、そうです」
「私の顔色はそこまで悪いのですか」
マイラは元々乏しい表情をさらに消してマリーに問うた。
「そうですか」
「それは」
「いえ、わかります」
自分でもというのだった。
「そのことは」
「そう言われますか」
「近頃身体が疲れやすいです」
その表情が消えた顔での言葉だ。
「どうにも」
「では余計にです」
「この薬で、ですか」
「ユニコーンの角です」
その薬が何であるかもだ、マリーは話した。
「万能の霊薬です」
「あの伝説の」
「それを手に入れましたので」
「私のことを聞いて」
「そうです、ですから」
「この妙薬を飲み」
「再びお元気になられて下さい」
こうマリーに言うのだった。
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