第百一話 長崎へその十二
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「まだ残ってますね」
「そうですね、ただ」
「ただ?」
「海軍の歴史は残っていて変わっていませんが」
それでもというのだ。
「やはり現代は現代であり」
「昔は昔ですね」
「そうです」
まさにというのだ。
「海軍は海軍ともです」
「言えますか」
「そうも思います」
「そうでもあるんですね」
「変わっているものと変わっていないものがです」
「あそこにもありますか」
「江田島にも。例えば」
ここで畑中さんが出した例はというと。
「制服もです」
「あっ、そういえば」
「はい、それはですね」
「違いますね」
冬のそれはだ。
「昔は詰襟で今はブレザーですね」
「そこが違いますね」
「夏の礼装は同じですが」
白の詰襟、所謂白ランはだ。
「それでもですね」
「変わっていますね」
「何でも一緒じゃないですね」
「変わるものは変わります」
僕にこのことを教えてくれた。
「万物は流転するともいいますし」
「ギリシアの言葉ですね」
「古代ギリシアの哲学です」
「そうでしたね」
言ったのは誰だっただろうか、テストに出て答案に書いて正解だったけれど今はもう忘れてしまった。小さな問題だったせいだろうか。
「その言葉通りですね」
「はい、このあらゆる物事はです」
「変わっていきますね」
「そうしたものですのね」
「変わっていくものもあり、です」
「変わっていないものもですね」
「やがてはです」
まさにというのだ。
「変わります」
「絶対に変わらないってないんですね」
「そうです、そう考えている人はです」
そうした人はというと。
「世の中のことがわかっていません」
「そうなんですね」
「はい、あらゆるものは変わります」
それこそというのだ。
「全てのものが」
「絶対に変わらないとかは」
「絶対はないです」
畑中さんは言い切った。
「よくも悪くも変わります」
「ですか」
「私もそうですし」
「僕もですね」
「そうです、そのことも宜しければ」
「はい、覚えておきます」
こう畑中さんに答えた。
「あらゆることがですね」
「そうです、ただ」
「ただ?」
「よく変わることばかりでもなく」
「悪く変わることばかりでもですね」
「ないです、あらゆる物事がです」
まさにというのだ。
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