179部分:バルドの旗の下にその二
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人間が現われた。
それは血の様な赤いフードが付いたローブを身に纏った老人だった。やや高めの背に皺だらけの禍々しい顔付きをしている。右目は無い。潰れているようだ。驚くべきはその左眼である。何と瞳が二つある。その険しい眼つきからこの男が邪眼の持ち主であるとわかるがこの二つの眼からは人のものとは思えぬおぞましい気を発していた。だがユリウスはこの男を見て微笑んだ。
「相変わらず面白い入り方をするな」
ユリウス自身の声も奇妙である。透き通り高くそれでいて邪な感じのする声と地の底から響く獣のような声が二つ同時に同じく発せられている。
「勿体無きお言葉」
男は一礼した。ユリウスの笑みがまるで道化師の仮面のようになった。
「ここに来た理由はわかっている。遂にユリアの居所がわかったのだな」
「はい、東のセリス皇子の軍におりました。どうやらレヴィン王が匿っていたようです」
「セリス皇子か・・・・・・。『光の皇子』と愚か者共に持て囃されているバルドの者だな。そしてヘイムの血も引く私の兄弟・・・・・・」
「その通りでございます」
「セリス皇子が『光の皇子』ならばさしづめ私は『闇の皇子』か。世を絶望の闇に染め上げる闇の後継者。そしてユリアは・・・・・・。フフフ、まあ良い。それにしても二人が同じ場所にいるとはな。各個に消す手間が省けるというものだ。既に手は打っているのだろうな」
「はい、ペルルーク城に私の部下を数名潜り込ませました」
「ペルルーク?あそこはまだ我等の勢力圏だぞ」
ユリウスはそう言って悪戯っぽい、それでいて邪悪な笑みを浮かべた。
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