British Rhapsody 〜赤城〜
Propose and Acceptance
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終わり、電さんたちがほくほく顔で観覧席に戻ってきたときのことだった。
「……アカギ」
「……はい?」
ロドニーさんがすっくと立ち上がり、私の目の前に来てまっすぐにこちらを見た。
「なんでしょうか?」
「……貴公に、稽古をつけていただきたい」
私のそばにいた戦艦棲姫さんと提督もロドニーさんを見た。
「ん?」
「お?」
会場は、水を打ったように静まり返っていた。気のせいか……少し寒くなった気がする。
「構いませんが……サシですか?」
「ああ」
久しく感じてなかった感覚を身体が感じている。鎧をつけていないロドニーさんの身体が、少しだけ大きく見える気がした。
「わかりました。では艤装を装備してきます」
まぁ別にプログラムが決まっているわけではない。ここで飛び入りでサシの演習をやっても大丈夫だろう。私はそう思い、艤装の準備にとりかかろうとしたが……
「待てアカギ」
「はい?」
「……司令官」
「ほいほい?」
ロドニーさんが、私のそばにいる提督に顔を向けた。私はこの時、彼女が何か大きな覚悟を持って私に演習を申し込んだことが分かった。
「……弾薬だが、実戦で使用するものを使いたい」
「はい?」
「!?」
演習の際、万が一の事故を防ぐため、使用する弾薬は殺傷力のない演習用の模擬弾薬を利用するのが常だ。試合形式の演習で実弾を使用するなぞ、少なくとも私は聞いたことがない。
「……ロドニー」
「なんだ司令官」
「何考えてるの? 轟沈したいの?」
「お前は私達が簡単に轟沈するような弱い艦娘だと思っているのか?」
「そうじゃないよ? そうじゃないけど……」
ロドニーさんのこの願いには、さすがの提督もうろたえているようだ。いつもの死んだ魚の目はなりを潜め、彼の声色からは必死にロドニーさんを説得しようという気概が感じられる。
ただならぬロドニーさんの気配に、私たちの周囲は騒然とし始めていた。普段は表情に変化がない提督が冷や汗を隠しきれなくなっている。戦艦棲姫さんも眉間に皺を寄せ、険しい顔でロドニーさんを見つめていた。大淀さんは顔が真っ青になっていて、彼女の不安感がこちらにも伝わってくる。
……そして、この時私の胸は静かに少しずつ、だが確実に高鳴ってきていた。
「司令官」
「ん?」
「私は、アカギと全力で勝負をしなければならない」
「どうして?」
「……どうしてもだ」
提督にそう言い放ったロドニーさんは、その青く澄んだ鋭い視線を私に向け、突き刺してきた。彼女の視線が私の心臓に深く突き刺さったことを私は実感した。だが今の私の心臓は、その程度の刺激で萎縮することはない。むしろその刺激が心地よく、さらに活発に鼓動し始めたこ
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