目々連
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ある者は物見高い目で。
ある者は敵意を含んだ目で。
ある者は小馬鹿にした目で。
ある者は畏怖を湛えた目で。
俺と奉は、食堂の片隅で好奇の視線にさらされていた。
「うむ、まずい。安定のまずさだねぇ」
いつもの通りB定食を平らげ、奉は食後の茶を呑む。湯気が立っても不思議と曇らない。相変わらず、妙な眼鏡だ。
いや、少しだけ今までと違う。
夏の『鎌鼬騒動』の際、奉の眼鏡のフレームが折れた。
応急処置として子供の頃に使っていた縁の太いフレームを引っ張り出して使っている。フレームの修理というか新調は、行きつけの眼鏡屋に依頼している、とのことだが、あれから結構経つというのに音沙汰がない。
『この硝子を嵌める眼鏡枠がそうひょいひょい出来上がってくるか。眼鏡市場じゃねぇんだよ』
奉はそう云うが、眼鏡の枠なんてレンズのサイズが同じならどれも一緒なんじゃないか、とも思う。今まで掛けていた眼鏡の枠も、何の変哲もない金古美の枠としか思わなかった。
「あの、隣…いいでしょうか」
視界の片隅に、さらりと一束の髪が入った。控えめな花の香りのコロンがふわっと香る。俺は思わず顔を上げた。
「えっ」
ばっと食堂中を見渡してみたが、わざわざ俺たちの横に座らなくても空きはいくらでもある。何故だ、何故この女子は俺たちの横に座る!?
「いい…けど」
横目に女子の容姿をチェックする。地味な色合いの眼鏡フレームが少し野暮ったいが、その奥の目は控えめながらもパッチリしている。何しろ睫毛が長い。この眼鏡を外したら、もっと可愛いのではないか。
何より、髪が美しい。きちんと櫛を通された豊かな髪は、まだ染めたことなどなさそうな、うぶな質感だ。
「不躾だぞ、結貴」
奉に軽く嗜められ、顔にぼうっと血が上った。
「…そんなんじゃ」
一応軽く否定したが、大人しそうで可愛い子だなと思ったのは事実だった。今まで俺の周りには居なかったタイプだ。…俺はやはり、少し惚れっぽいのか。
「―――相談が、あるんですけど」
女子は唐突に、俺たちに相談話を持ち掛け始めた!
なにこの子、大人しそうな顔して意外とグイグイ来るタイプか!?
「俺たちは、あんたと初対面だがねぇ」
お前はお前でバッサリいくな!!女子は眼鏡の奥の目を丸くして云った。
「お二人は、拝み屋さんではないんですか?」
Aランチの盆に、箸がぽろりと落ちた。
―――あの悪夢のような海釣り以来、友人たちのうち、数人が俺たちを遠巻きにするようになったことには気が付いていた。
あの日、甲板で起こったことを一部始終見ていた綿貫が、何も聞いてこない事は気になってはいた。だがあの時は疲れていて、誰とも話をしたくなかったから有難くさえ
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