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霊群の杜
目々連
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怯えてきたこの女の眼鏡は」


恐怖に、鋭敏に反応するんだよ。と眼鏡屋は呟いた。


「現在、過去、未来。全ての恐怖に反応する。…あんたぁ、結構『視る』質だろ」
肩をぷるりと震わせ、彼女は頷いた。
「…怖いもの、見ちゃうことは珍しくないんです…でも、正体の分からないものに、こんなに見られるのって初めてで…」
「視るから怯える。怯えるから、その恐怖があんたの眼鏡を『育てる』。…悪循環にいるわけだが」
すっと手を伸ばして、眼鏡屋が静流さんの眼鏡を引き抜いた。
「こりゃまぁ、ひょっとしてだが…今回ばかりは、命拾いをしているかもしれない」
彼はのろりと暗がりに溶けるように、店の奥に入り込んだ。
「えっ、あの、私の眼鏡…」
それがないと見えないんです…と呟きながら、おろおろと周囲を見回す。
あ、睫毛すごい長い。暗がりに映えるタイプの、陰と陽で云えば陰の美しさをもつ子だ。…何というか、とても勿体ない。
「コンタクトとかにしたらいいのに」
「えっ」
「あ…いや」
つい言葉が漏れてしまった。俺は軽く咳払いをして目をそらす。眼鏡を外した彼女はその…なんというか…


すっごい、凝視してくる。


とても覚えのある凝視だ。なんで俺の周りは凝視してくるひとが多いのだろう。
「ほれ、こいつを持っていけ」
暗がりから眼鏡屋が、ゆらりと現れた。彼女に差し出された眼鏡は、大して何かが変わったようには見えないが…。
「え、あの…ありがとうございます」
彼女はおずおずと眼鏡を受け取り、すっと目にあてた。
「……わ」
静流さんが小さく怯えたような声をあげた。
「……これ、すごく見える……」
恐々と周りを見回した後、彼女は再び今までと同じように目を伏せた。…なんでだろう、眼鏡がなくて周りが見えない時より、今の方が怯えて見える。
「あんたぁ、そうとう『視える』のに、肝心な部分から逃げてんだよ。その逃げ癖が眼鏡にもにじみ出ている。だから『視られている』なんて曖昧な解釈になるんだな」
顎をくい、と上げて、眼鏡屋が静流さんの眼鏡を指さした。彼女はびくりと肩を震わせて俺の影に隠れる。
「だって…視えても何もできないなら、はっきり見えないほうがいいって…」
「今回は駄目だと思ったから、こいつにすがったんだろ」
そう云って眼鏡屋は、奉を顎で指した。奉はこいつはこいつで、ただニヤニヤしながら眼鏡屋と静流さんのやりとりを眺めている。
「あんたの危険に対する嗅覚は、『こっち側』からみてもちょっとしたもんだ。だが自ら精度を落としていたんだよ。視えるのが怖いから。…根っからのビビリだなあんたぁ」
「す、すみません…」
怯える静流さんをひとしきり凝視すると、眼鏡屋はすっと立ち上がった。
「その余計な怯えを『拭き取って』やった。…怖いのは当
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