目々連
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んかすげぇなとは思っていたが。
「そんなわけあるか。…ここだ」
奉が足を止めたのは、寂れた商店街の片隅に佇む木造家屋の前だった。煤けた木枠にはめ込まれた無数のガラスが少し異様だが、それ以外はこの古びた街並みにしっくりと溶け込んでいる。奉はガラスの一部にそっと手をかけ、薙ぐように引いた。
「亭主」
そう一声かけると、店の暗がりの辺りがぶわりと膨らみ、のそりと起き上がる気配が満ちた。
とても狭いが、奥に深い店だった。入口の右手に、少し長すぎるんじゃないかと思うようなカウンターがある。それは入口と垂直に店の奥に伸びていて、一番端は暗がりになっていてよく見えない。
そして反対側の壁には眼鏡の枠が、野蛮な戦の戦利品のように荒々しく、無造作に掛けられている。それこそ、無数に。端の方はやはり暗がりに吸い込まれている。冷やかし半分に入り込んで『きゃーかわいいー』とか云いながらサングラス掛けまくったりとか絶対出来ないタイプの店だ。
「おう、玉群の」
細い銀縁の眼鏡をかけた30手前くらいの男が、眠たそうに体を起こした。年齢の割には白髪が多い、それ以外は際立った特徴のない男だ。
「暇か」
「おお…眼鏡なんざ、そうひょいひょい作るもんでもねぇからな。…おや、今日は珍しく眼鏡率高めじゃねぇの」
男は、にやにやしながら俺の方を見た。
「眼鏡の中に〜、裸眼が一人〜」
なにこのひと。
「当たり前だ。眼鏡に用のある奴しか来ないだろうがこんな店」
「違いねぇな…ほれ、眼鏡を貸せ」
―――驚いた。
奉とこんな風に話し、関わる奴は俺だけだと思っていた。この眠そうな男は、あの謎の眼鏡を事もなげに受け取り、眼鏡枠から煙色のレンズを外す。そして金古美の眼鏡枠にレンズをはめ込み、奉に突き出した。
「ほれ、終了。…珍しいな」
お前さんが、そんなぞろぞろお供を連れて現れるたぁね…と呟いて、男は再び暗がりに戻ろうとした。
「こっちの連れは、別件よ」
「……ふぅん」
品定めでもするように、男は俺達を眺めまわした。
「……あんたぁ」
ふと何かを思いついたように、男は顎を上げる。そしてすっと静流さんを指さした。
「臆病ものだろう。かなりの」
「えっ…」
それこそ臆病者丸出しで、静流さんは身を縮めた。
「な…なんで…分かったんですか…?」
…え?
「染み込むんだよ、その眼鏡にな」
……えぇ?
「私の眼鏡に…怯えが?」
………ていうか?
「…見りゃ分からんかねぇ」
「それだよ!俺が云いたかったのは!!」
奉の言葉に、思わず叫んでしまった。そんなんひと目で分かるだろうが。
「俺は眼鏡の話をしてんだよ」
眼鏡屋が、かつ、とそこらへんにあった眼鏡の蔓でカウンターを叩いた。
「眼鏡に染み込むのは、そいつが『視てきた』事物。見るもの全てに
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