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歌集「春雪花」
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 細々と

  待ちて想ふも

   晩冬の

 侘し降りける

    小夜の粉雪



 来ないと分かってはいても…ふと思ってしまう…。またフラリと扉を開き、その姿を見せてくれるのではないかと…。

 そんな淡い期待など虚しいだけで…彼はもうここには来ない…。

 しんと静まり返った夜更けには…ただ侘しく粉雪が降り頻っている…。


 まるで…彼への想いさえ覆い尽くさんとばかりに…。



 逢えぬ間の

  寂しさ埋めし

   独り夜の

 溜め息つきてや

    歌ぞ詠みける



 彼に会えないこの月日…いや、もう会えないのかも知れないが…。

 寂しさだけが取り巻く世界で、冬の夜などはより一層寂しさが増すもの…。

 夏の蛙や秋の虫の音など…そんな音は一切なく、時折吹く風音だけが切なく響いて…独りなのだと溜め息を洩らす…。

 想うは勝手…故に、寂しさも勝手…。

 我が儘でも彼に会いたい…このまま直ぐにでも会いに行きたい…。
 それが出来たなら…どんなに良いか…。


 今は静かに…想いを詠むだけ…。

 ただ…それだけ…。




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