第二話 傷ついた者達の日常
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いく。時雨の姿が見えなくなると、夕立は深いため息を吐いた。
「はぁ〜………時雨、怖かった……ぽい」
夕立はそうつぶやくと、時雨に言われた通り先に風呂に入るために建物の方へと歩いていく。
夕立はまだ入ったことがないがここの旧泊地は入渠ドックと風呂は別々に造られており、風呂は露天風呂というもののようになっているらしい。
夕立は建物内に入ると、そのまま廊下を歩いていく。すると、温泉マークの描かれた暖簾がかけられた入口が見えた。夕立は風呂場に入ると、脱衣所で服を脱ぐ。
すると、棚の一つに黒いコートがかけられていることに気がついた。
(凰香さんも中にいるのかな?)
夕立はそう思いながら、服を脱いで棚に置いてある籠の中に入れる。そしてバスタオルを身体に巻くと、扉を開けて浴場に入った。
「うわぁ………!」
夕立の目に飛び込んできたのは、温水が張られた岩や石で造られた巨大な風呂に周囲に生えた草木、星が輝く夜空など初めて見る光景だった。どうやらこれが露天風呂というものらしい。
そしてその奥にあるシャワー場に、腰辺りまである黒髪の少女が、椅子に腰掛けて身体を洗っていた。
「お…凰香さん」
「……夕立か」
夕立が声をかけると、身体を洗っていた凰香が振り向く。凰香の身体は痩せ気味なのか少し細く、胸も夕立よりも小さいが全体的にスタイルが良かった。だが、夕立の目は凰香の異形の右腕しか見えていなかった。
凰香の右の二の腕から肩にかけて火傷のような傷があり、二の腕から先は黒く染まり、鋭い鉤爪に覆われ、赤いオーラを纏った異形の腕となっていた。
「……これが気になる?」
夕立が凰香の右腕を見つめていると、凰香が右腕をヒラヒラと振りながらそう言ってきた。
夕立は慌てて首を横に振りながら言った。
「い、いえ!そういうわけではーーーー」
「いいのよ、別に。興味が湧いたりするのは当たり前なことだから。………それよりもそんなところに立ってないで、こっちに来たら?」
「……ぽ、ぽい………」
凰香にそう言われ、素直に凰香の元に移動する。すると凰香が夕立を椅子に座らせ、夕立の頭からシャワーを浴びせてきた。
シャワーからでるお湯は熱すぎなければぬるすぎでもなくてちょうど良く、水圧も強すぎでもなければ弱すぎでもなくて、こちらもちょうど良かった。
夕立がお湯が目に入らないように閉じていると、頭に当たっていたシャワーが止まり、今度は凰香の手が夕立の頭に触れた。
「……ッ!」
夕立はビクリとしてしまうが、凰香は気にすることなく夕立の頭を洗い続ける。
夕立の頭を洗う凰香の手はとても上手で、頭を洗われていた夕立は今までに感じたことのないほど心地
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