第二話 傷ついた者達の日常
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名が頭を下げて凰香に命令いれを請う。その姿はまるで『兵器』そのものだ。いや、榛名達からすればこの姿は当然なのだろう。その榛名のそばにいる夕立は怒りや恨みの籠った眼で凰香を睨んできていた。
しかし、凰香のやろうとしていることはまだ達成できていない。
凰香はため息を吐いて言った。
「………ハア。榛名、それに夕立。いつ私が『お前達は兵器だ』なんて言ったの?」
「え………?」
「だ、だって凰香さんは夕立達に『戦いから逃げちゃいけない』って………」
「私は一言もそんなこと言ってないわよ。……それにあなた達は『兵器なんかじゃないわ』」
「どういうことですか………?」
凰香の言葉に榛名がわけがわからないといった表情で聞いてくる。夕立もまた不安げな表情で凰香を見てくる。
凰香は榛名と夕立を見ながら言った。
「どういうことも何も、自分で言ったじゃない。『死にたくない』って」
「確かに言ったけど…それが何だって言うんですか……?」
「……確か兵器は『意志』を持たないんだったわよね?でも、あなた達は死にたくないからあそこから逃げた。それはすなわち『生きたい』という意志があった」
凰香はそこまで言うと、少し間を空けてから口を開いた。
「………あなた達は動いているんじゃない。最初から『生きている』のよ」
「「!!」」
凰香の言葉を聞いた榛名と夕立が眼を大きく見開く。
凰香のやるべきこと………それは二人を『兵器という名の枷』から解放することだった。
二人はあの鎮守府の提督に『兵器』として扱われ、それ以外の全てを否定されてきた。二人は無意識に『自分達は兵器だ』と思い込んでしまっていたのだろう。
なら、どうやって二人に『自分達は兵器ではない』と認識させるか?
それは二人が『自分達は生きている』ということをわからせればいい。そのために、凰香はわざと榛名と夕立にあのようなことを言ったのだ。とはいえあの鎮守府から逃げた時点で、二人には『生きたい』という意志があった。二人はそれを認識できていなかっただけである。凰香はそれを認識するのを少し手伝っただけに過ぎない。
すると、榛名が凰香に聞いてきた。
「……ほ…ほんとうに、榛名達は……生きていいんですか………?」
「さっきも言ったでしょ。あなた達は『生きてる』って」
凰香はそう言うと、榛名が床に座り込んで涙を流し始める。夕立も同じように口元を手で押さえながら涙を流し始める。
凰香は榛名と夕立に近づくと、二人を抱き締めて言った。
「他の誰が何と言おうと、あなた達は生きている。その事実は誰も否定することはできない。だから、これからは胸を張って言いなさい。『私は生きている』んだと」
凰香
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