第二話 傷ついた者達の日常
[4/13]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
であの男に言われました」
「……詳しく聞かせてもらえるかしら?」
防空棲姫が話の先を促す。榛名が頷いて、そのことを詳しく話し始めた。
「はい。最初は歓迎するみたいなことを言われて、その後は鎮守府の説明と担当する任務の大まかな内容を教えられました。……その鎮守府の説明の中に『補給』以外の食事を禁止することを言われました。私達艦娘も身体の構造は基本的に人間と同じですから食事も必要なので、食事の禁止についての理由を聞いたんです。そしたらあの男は高笑いしながら答えました。それが………」
榛名がそこまで言って、言葉を切った。その表情はかなりの嫌悪感に満ちていた。おそらく、それだけ嫌な言葉だったのだろう。
榛名は目を閉じて1、2回深呼吸してその嫌悪感を沈める。そして目を開いて凰香達を真っ直ぐに見据えて言った。
「……『兵器が『生きる』必要はない。ただ俺の命令に従って『動けば』いい。兵器は生きているのではない。ただ『動いている』。何の感情も思考も持たず、ただ敵である深海棲艦を撃滅する兵器。『使い手』である俺の命令を忠実に守り、棄てると言われればその場で果てる、ただそれだけの存在。
「『そして、艦娘は資材を食べれば生きれる………いや、それを『生きられる』なんて言えるのだろうか?燃料や弾薬だけを補給すれば『動ける』のだ。致命傷を負おうが、手足が吹き飛ぼうが、入渠してしまえば以前と変わりなく『動ける』のだ。そんなお前達が『生きている』と言えるのか?
「『ただの『兵器』が軽々しく『生きる』という言葉を使うな。
「『故に、資材の食事の一切を禁止する』………というものでした」
そう言った榛名の表情は今にも泣き出しそうだった。
それを見た時雨が珍しく表情に激しい嫌悪感を満ちさせ、忌々しそうに言った。
「………反吐が出るね」
「………そうね。こればかりはいくら私でも許し難いわ」
時雨の言葉に防空棲姫が同意する。艦娘の敵である深海棲艦の彼女でも、その提督の言葉は到底許すことのできないものだったのだろう。
凰香は榛名に言った。
「……じゃあ、榛名よりも後に入った艦娘は全員食事を知らないのね?」
「……はい。榛名よりも前にいる艦娘はわかりませんが、榛名よりも後に入った艦娘は全員食事を知らないと思います」
榛名が頷く。
榛名と夕立が食事を知らない原因は、提督が艦娘達を『兵器』として扱っていたからだ。ただ己の命令に忠実に動くもの、棄てても代えの効く代用品。提督は艦娘の意志や人格など全てを否定し、ただ戦うだけの『兵器』として扱っていたのだ。その言葉は今も榛名と夕立の『枷』となっている。
そのことを知った凰香の頭の中で何かがキレる。その瞬間、凰香の頭に二本の角が生
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ