第二話 傷ついた者達の日常
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佐世保第十三鎮守府から逃げ出してきた榛名と夕立が旧泊地に来てから次の日、凰香は榛名と目を覚ました夕立を連れて工廠へと向かっていた。
「お、凰香さん。その……どうしたの…ですか?」
榛名の手を握って歩いていた夕立がビクビクしながら聞いてきた。夕立もまた目を覚ました時に凰香がかつての奇襲作戦の唯一の生き残りであること、防空棲姫が凰香の身体に魂を宿させて生きていることを知った。それからというもの夕立は凰香と防空棲姫、さらには姉妹艦である時雨のことを怖がってしまっているのか、出会う度にビクビクしていた。
凰香は歩きながら言った。
「あなた達の艤装のことでちょっと話したいことがあるのよ」
「榛名達の艤装ですか?」
「ええ」
榛名の言葉にそう返すと、凰香は辿り着いた工廠の大扉を開いた。
ギィィィィィッ、と軋む音が響くと共に中から油の臭いが漂ってくる。凰香はその臭いを気にせずに工廠の中へと入っていく。その後ろを榛名と夕立がついてきた。
工廠の奥へと進んでいくと、奥に実体化した防空棲姫と黒いタンクトップにオレンジ色のオーバーオールを着た時雨が榛名の艤装を修理していた。
「防空姉、時雨。調子はどう?」
「……はっきり言って、あんまりよくないわね」
防空棲姫が珍しいことに、しかめっ面でそう言ってきた。そして榛名と夕立がいることに気がつくと、立ち上がって言った。
「……あなた達の艤装なんだけど、夕立ちゃんのは修理することができたわ。まあ、これは同じ白露型駆逐艦の時雨ちゃんの知識があったからこそ直すことができたんだけどね。………ただ、榛名の艤装はもう手の施しようがなかったわ」
「それって、どういう………」
「うん、君の艤装の生体認証装置が完全に壊れてしまっているんだ。でも、ここでは生体認証装置を修理することができない。だから君の艤装はもう使い物にならないんだ」
「そんな………」
時雨の話を聞いた榛名が衝撃を受ける。時雨が言った通り、榛名はこれから先戦うことができない。それはつまり、『艦娘として生きることができないこと』を意味していた。
だが、話はここで終わりではない。凰香は榛名に言った。
「榛名、あなたにはこの先二つの道があるわ」
「二つの道、ですか………?」
「ええ。一つは解体されて普通の人間として生きる。………もう一つは『第二次改装』を受けて、新たな力を得る」
一つ目の道は解体されて普通の人間になること。そうすれば榛名はこれから先深海棲艦と戦わなくてもよくなる。しかし、解体されるということは、艦娘だった頃の記憶も全て失うということだ。それはつまり、榛名にとって大切な人物である夕立の記憶も失ってしまう。
そしてもう一つは第
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