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艦隊これくしょん【幻の特務艦】
最終話 本日天気晴朗ナレドモ波高シ
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て、俺は艦内から出ることをやめてしまった。
 それを叱咤したのが、瑞鶴だった。すさまじい勢いで俺に詰め寄り、
「何逃げてんのよ!?感傷に浸ってんじゃないわよ!!」
と怒鳴ったのだ。その言葉に俺は目が覚めた。

 悲しくてつらい思いをしているのは、ほかならぬ奴らなのだ。俺が当事者気取りになって悲しみに沈んでいてどうする?そんなことをして死んだ奴らが喜ぶと思うのか?死者への弔い?そんなものはたくさんだ!!俺は、俺は俺のやり方で奴らを元気づけて見せる。
 そう思って、俺は葵の奴と長い時間話し合った。なんだかんだ言って奴がここにいることはとても心強い。俺一人で有れば、どうしたらいいか迷って何もできなかっただろう。
話し合った結果、ひとまず横須賀鎮守府に、そして呉鎮守府に艦娘たちを戻すことにした。それが明日の予定だ。
 懐かしい故郷での休暇、そして時間こそが、彼女たちをいやすだろう。時間はかかるだろうがな。


 もう太平洋には深海棲艦の姿はない。


掃討作戦も終了し、何よりもイージス艦に最新鋭システムが導入され、ジャミングにも対抗できるようになってきたんで(それでも予断を許さない状況だが)艦娘の護衛は不要だろう。
 そこまで考えてふとわかった・・・いや、わかったと思ったことがある。どうして艦娘たちが命を賭けてヤマトを守ろうとするのか。それは、軍人としての務め、義侠心、いいや、そんなもんじゃない。そういうものもあるのかもしれないが、本心はもっと単純なものじゃないかって。


 逃れたいからだ。前世の呪縛から。


深海棲艦が消えれば、艦娘たちが戦う意義は消滅する。そうなれば艦娘たちはいわば用済みになる。政府のお偉方がどう考えているかわからないが、俺ならば奴らを開放するだろう。彼女たちは一人の人間としてまた元の生活に戻ることになる。
 前世か。前世とは。俺にはわからない。前世を知らない俺にはわからない。そこには良い思い出もあるかもしれないが、悲しい思い出の方がずっと多いのだろう。その負の感情から解放されたい、そういうことなのではないかと思うんだ。

 今日、紀伊に会いに行った。妹たちを失ったというのに、紀伊の奴は気丈だった。終始落ち着いていて俺と話をしていた。・・・強いんだな、と、最初俺はそう思ったが、後でそっと話に来た榛名によると、紀伊が生き残った最後の妹と抱き合ってわんわん泣いていたという。それを聞いて俺は胸が苦しくなった。
 こんな状態なのに、乱れを見せようとしない紀伊に俺は気を使われているのか。だが、今度は俺が奴を支える番だ。
 
 俺は奴と最初に出会った時のことを思い出していた。奴の履歴書には、紀伊型なんていう文字はどこにもなく、ただの「特務艦」としか書いていなかった。艦娘たちにきいても、前世とやらでは紀
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