最終話 本日天気晴朗ナレドモ波高シ
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話し続ける。どんどんと早口になっている。
「私まだノース・ステイトの艦娘と会ってないんだよね。どんな人なんだろう?元気になったらノース・ステイトの艦娘と会わなくちゃそれに紀伊たちのところにもお見舞いに行ってあぁそうだハワイにしか売ってないお土産買わなくちゃねそれに――。」
「蒼龍さん!!」
大鳳の悲痛な叫びに蒼龍は口を閉ざした。
「無理しないでください!私たちに気を使わないでください!」
「どうしろっていうの?」
蒼龍が低い声で言った。やや唐突だった。そして声には冷たさが漂っていた。
「泣けっていうの?思いっきり泣けっていうの?そんなことしたって・・・・。したって・・・・。したって・・・。」
声が小さくなった。
「飛龍は帰ってこないんだよ・・・・。」
かすれるような声だった。
「飛龍が帰ってこなくちゃ何にもならないんだよ・・・・私にとっては、ノース・ステイトも震電もミッドウェーも、もうどうでも・・・・・いいんだよ・・・・。」
顔を伏せた蒼龍を鳳翔が抱きかかえた。
「どうしろとはいいません。そして私たちも何も言いません。ただ、そばにいさせてください。一人にならないで。お願いです。」
蒼龍は小さくうなずいた。それだけで鳳翔たちにとってはもう充分だった。
* * * * *
数日後――。
イージス艦隊がハワイに続々と入港してくるのを、病室から出てきた艦娘たちはじいっと丘の上から見守っていた。本来ならば、劇的な光景に皆が感激しているところだろう。この空虚な悲しみが胸の中で渦を巻いていなければ。
「紀伊。」
包帯を左肩から左腕にかけてグルグル巻きにされ、全身に大小のバンドエイドを張られた紀伊はぎこちなく声の主を見た。長門だった。彼女も負傷して、陸奥に支えられてここに来ていたのである。
「お前に今更こんなことを言っても蔑まれるかもしれないが、どうしても言っておきたいことがある。」
「・・・・・なんでしょうか?」
小さな声で紀伊は応えた。直感的に長門が今この場で言おうとしていることが何か、想像がついたからだ。それは今は触れてほしくない事だった。
「尾張の事だ。私は、あいつのことを、あいつの本当の気持ちを何一つ汲んでやれていなかった。」
「・・・・・・・。」
「当初奴は私たちと始終衝突していてな、しまいには嫌気がさして誰もあいつと艦隊を組もうとしなかったほどだ。それでも奴は私たちに突っかかってきた。後方から前線の事を知りもしないでよくもそれだけ言えたものだと当時は思っていた。」
「・・・・・・・。」
「ところが、今思うと知らなかったのは私たちの方だったんだな、そして覚悟のほどもあいつの方が上回っていた。自分の命を捨てて深海棲艦を倒すなど、私には出来そうにない――。」
「もういいです。」
紀
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