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艦隊これくしょん【幻の特務艦】
最終話 本日天気晴朗ナレドモ波高シ
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が、それでもここしばらくは入院を余儀なくされることになるだろう。
「本当に、そうするの?」
「あぁ、もう決めたんだ。」
病床から半身を起こして窓の外を見つめていた長門はそのままで、
「横須賀鎮守府に戻り次第、私は秘書官を辞め、連合艦隊総旗艦を辞職する。」
「どうして?」
「あれほど犠牲を出した。仲間を死なせておめおめ自分が生き残ってしまった。」
乾いた声だったが、その中に激しい感情が渦巻いているのを陸奥は感じ取った。
「だとしても、今この時に決断しなくてもいいと思うわ。もしあなたが辞めるのであれば私も副官としての職務を辞するわよ。」
「・・・・・・・・。」
応える代わりに長門は深い吐息を吐いた。しばらくは病院のカーテンを揺らす風のかすかな音だけが二人の耳に聞こえていた。
「結局のところ。」
ややあって、陸奥が口を開いた。
「言い方は悪いかもしれないけれど、あなたは逃げているんじゃないの?職責を果たせなかったことを悔いているのではなくて、死者からのけん責をあなたは恐れているのじゃないの?」
「あぁ、そうさ!」
長門がやるせない声を出した。
「事実だからな。」
くそっ、と長門は毒づいた。長門らしくないと陸奥は思った。
「私には死者からの声は聴けないけれど・・・・。」
陸奥はそっと長門の肩に手を置いた。
「きっと彼女たちがあの世で聞いたら、あなたを叱責するに決まっているわ。そしてこういうでしょう。『逃げるな。』って。」
再び長い長い沈黙が部屋に満ちた。
「陸奥はいつもそうだな。」
陸奥が顔を上げると、長門がこちらを見ている。寂しそうな顔だった。
「わかった。前言撤回だ。それに、私以上に苦しんでいる者がいることに気づかされたよ。連合艦隊総旗艦として、傷ついた者たちを支えなくてはならない。死んでいった皆のためにもな・・・・。」
「あなただけに重荷を背負わせないわ。」
陸奥が静かに言った。
「私も副官として、あなたを支えていくから。」
暖かな手が長門の肩に置かれた。



赤城と加賀、そして鳳翔と大鳳は蒼龍の病室を訪ねていた。
「そんなに大勢で来られても何も出せないよ。」
蒼龍は苦笑した。
「そして、そんなに気を使ってもらわなくてもいいよ。ついにやったよね、赤城。私たち、前世の因縁を断ち切ったじゃん。空母一人の損失でミッドウェー本島攻略できたんだもの。きっと前世の軍令部もこれくらいの損失だって想定していたんじゃない?」
「蒼龍・・・・。」
「蒼龍・・・・。」
明るい声で話す蒼龍を赤城と加賀はどうしていいかわからずにただ見ていた。
「ミッドウェー本島攻略して、震電も空を飛んで、私、やることはやったって感じよ。とても・・・・。」
「蒼龍さん・・・・。」
鳳翔がためらいがちに話しかけたが、蒼龍は
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