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艦隊これくしょん【幻の特務艦】
最終話 本日天気晴朗ナレドモ波高シ
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れた時だ。
「Hi!!Girl`s!!」
場違いな明るい声がした。振り向くとサウスダコタがこちらに歩いてくるのが見えた。そばに長い黒髪を腰まで伸ばしたきりっとした顔の艦娘が付き従っている。灰色の軍服と黒いスカートを身につけているので、余計暗くとっつきにくい印象を与えるが、もう瑞鶴たちは慣れっこになっていた。
「どう?あんたたちの仲間の様子・・・って、その顔じゃあ駄目みたいね。」
「そんなことないデ〜ス。時間が立てば元気いっぱいになりマ〜ス。きっと・・・・。」
いつも元気な金剛もこの時ばかりは自信なさそうだった。
「あんたたちがそんな調子でどうするのよ!?って、ああもう!!どうしてあんたが泣くわけ?!エンタープライズったら!!」
す〜っと一条の涙が頬を伝ったままエンタープライズは何もいわない。それでも金剛たちはわかっていた。極端に無口だが、とても優しい気質であることを、一挙一動で金剛たちはよく知っていたからだ。
「私だって泣きたいわよ・・・。」
サウスダコタが湿った声を出した。それを出したのを恥じるようにブルブルッと首を振って顔を上げた。
「でも、あんたたちが泣かないから、私も泣かないわ。私たちにできることがあったら、いつでも言ってね。私、ものすごく悔しいんだから!!」
「ありがとうございます。」
翔鶴が一礼した。
「何か困ったことがあったら、いつでも相談させてください。たぶん・・・私たちだけでは・・・・。」
翔鶴は切なそうな目で、病棟を見上げた。そこには幾人もの傷ついた者がいるはずだった。春めいた風が吹き渡り、さっと艦娘たちの髪を乱した。
 ふと、シャランという鈴の音が聞こえた。
 一同が振り向いてあっと声を上げた。そこには穏やかな表情で見返す大和の姿があったからだ。
「や、大和!!も、もういいのですカ!?」
金剛が度肝を抜かれた様に声を上ずらせた。
「ええ、もう充分泣かせていただきましたから。」
微笑んでいるが、その眼の淵には、頬には、涙の跡が残っている。それでも凛として向かい合っている姿に声こそ出さなかったが、皆感嘆の念を胸にあふれさせていた。
「それに私は妹を、武蔵を誇りに思います。自らを盾にして私を、紀伊さんたちの背中を守り抜いて、最後は立ち往生・・・・本当に立派でした。本当に・・・武人として・・・・立派に・・・・。」
大和は不意に言葉を切り、顔を背けた。こみ上げてくる震えを懸命に押し殺そうと努力していた。こんなとき、どんな言葉をかければいいのだろう。もどかしささえ感じながら金剛たちは大和をみつめることしかできなかった。


* * * * *
「長門・・・・・。」
病室の一画で、陸奥が長門に話しかけた。戦闘終了直前、深海棲艦から放たれた砲弾が長門を襲い、大けがを負っていたのだ。命に別状はなかった
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