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艦隊これくしょん【幻の特務艦】
最終話 本日天気晴朗ナレドモ波高シ
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あなたは・・・・。」
涙にぬれた声で葵はそうつぶやいた。だが、いつまでも泣いてばかりはいられない。これからすべき仕事は山ほどある。それこそ悲しみに沈んでいる暇はないほどだ。

 葵はアルバムをそっと書棚に戻し、一つ大きく息を吸って気を静めると、自室を出ていった。





* * * * *
「立ち聞きはよくないデスよ。榛名。」
廊下で一人佇んでいた榛名ははっと振り向いた。金剛が立っている。
「キーのことはそっとしておいてやりなさい。それが私たちにできる唯一のことデ〜ス。」
「でも、でも・・・。」
思わず反駁してしまいそうになる榛名に金剛は首を振った。そして背中に手を回すと、榛名を廊下から連れ出したのである。
病棟の外では、瑞鶴と翔鶴が待っていた。
「どうだった?」
瑞鶴の問いかけに榛名は力なく首を振った。
「そう・・・。」
瑞鶴は深い吐息をついて、空を見上げた。穏やかな空だ。12月だというのに、まるで春のような陽気である。
「こんなことになるなんて・・・・意気込んで覚悟を決めてハワイに来てみれば、敵はいない。どうして提督は・・・・。」
そこまで言いかけてから瑞鶴は首を振った。そんなことを言いだすこと自体何にもならない愚かなことだということに気が付いたのである。
「そうよ瑞鶴。今ここで話していてもどうにもならないわ。それよりも、今は傷ついた人たちが一日でも早く立ち直れるように、私たちが頑張らなくては。」
「そうデ〜ス。私たちまでしょげていたら、きっとヴァルハラからお叱りが来るネ。」
「そうね、そうだよね。翔鶴姉。金剛。」
瑞鶴はしっかりうなずいた。太平洋上の深海棲艦は撃滅できたとはいえ、まだ残党は残っていて、鳳翔たち呉鎮守府艦隊はその掃討作戦をノース・ステイトの艦娘たちと行っていたのである。今はビスマルク、プリンツ・オイゲン、天城、葛城、雲龍、雷、電、暁、響が出撃しているはずだった。
 と、そこに利根、筑摩、熊野、鈴谷、伊勢、日向たちがやってきた。
「ビスマルクと交代して引き揚げてきたけれど、紀伊の様子、どう?」
伊勢が尋ねたが、一同の顔を見て、
「そっか・・・まだなんだね・・・。」
「無理もない。姉妹を二人も失ってしまったのじゃからな。今度という今度は吾輩もどうしたらいいか、わからんのじゃ。」
いつになく利根がしおれた声で言う。
「時間が必要です。私たちにも紀伊さんにも・・・・。」
「そうは言いますけれど、筑摩。このまま紀伊さんを放っておいて、大丈夫なんですの?」
「でもさ、そういうけれど熊野。こんな時になんて声をかければいいわけ?それに第一、姉妹を亡くしたのは紀伊だけじゃないんだよ。他の人のことも考えなくちゃ。」
「わかっていますわよ、鈴谷。でも・・・。」
一同が重苦しい雰囲気に包ま
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