最終話 本日天気晴朗ナレドモ波高シ
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の稼働可能な最後の一人として――。
ノースステイトから派遣された艦隊も横須賀鎮守府に立ち寄り、順次呉鎮守府、佐世保鎮守府を経由することとなっている。そこで合流した連合艦隊がグランド・ブリタニカに向かうのだ。
途中、リパブリカ・フィリップを通り抜けていかなくてはならないが、どういうわけか、リパブリカ・フィリップに跳梁している深海棲艦たちは遥か南方、南極方面に引き上げてしまったという報告が入っている。いずれそれらに対しても掃討作戦を実施しなくてはならないだろうが、まずは各国の国力を回復させ、それぞれの海を奪還することが第一歩だ。
「派遣艦隊の旗艦であるあなたがそんなにしょげていたら、同行する皆も向こうの方々も笑ってしまうわよ。」
「でも・・・・。」
讃岐は顔を上げて紀伊を見た。
「本当ならば紀伊姉様が・・・・。」
紀伊は目を閉じ、緩やかに首を振った。さあっと流れてきた風に銀髪がふわりと靡く。
「私は・・・・戦えないわ。少なくとも当分の間は。」
紀伊の左肩左腕は未だ癒えぬ傷で包帯がまかれている。骨が複雑に砕けていて元に戻るかどうかはわからないとメディカル妖精に言われた。
その瞬間紀伊は思った。自分の役目はこれで終わったのだと。
現に紀伊型空母戦艦から派生した新生艦娘たちが近いうちに就役するという話も聞いている。私は私、彼女たちは彼女と紀伊は思うのだが、純粋な能力から行けば後発組の方が優れている。
「それも運がいいのかもしれない。こうしてここに帰ってこれただけでも・・・。」
紀伊は帰らなかった皆、尾張、近江たちを思ってしばらく胸に右手を当てていた。
「ねぇ、讃岐。」
「はい。」
「あなたはもしかして私のようになりたいと思っているのじゃない?」
「だって当り前です!紀伊姉様は艦隊旗艦として立派にお仕事をされたのに、私は、とてもそんな!!・・・それに。」
「それに?」
「わ、私敵艦載機にトラウマがあって・・・・・。」
それはずっと気になっていた事だった。思いがけず讃岐から言い出したことに紀伊は驚きながら耳を傾けていた。
「初めての出撃で敵の空母艦隊と出会って、射出された艦載機の直撃を喰らったんです。幸い、艤装が機能して対空砲火でギリギリで仕留めてくれたんですけれど・・・・それ以来怖くって・・・・。」
そうだったのか、と紀伊は思った。初めて経験した戦いでのトラウマは大きなものだ。だが、それを乗り越えられなくては、前に進めない。
紀伊は優しく妹の肩に右手を置いた。
「私も最初の頃はそうだったわ。榛名さん、瑞鶴さん、皆さんに比べて私は到底及ばないと思っていたし、初めての戦いでは暁さんが大けがしたのを見てとても怖かったの。だから感じていたわ。きっと私は他のみんなよりも臆病なんだって。」
紀伊は鎮守府の司令部を見た
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