ターン66 覇王の粛清
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身をそのブレスレットにぶちまける。1瞬ひやりとする感覚が腕に来たが、抗議するより前に目の前で起きた光景に言葉を失った。ブレスレットが淡い青の光を放ち、かかった水をすべて吸い取っていく。ほんの1秒ほどで光は収まり、後には水滴1つ残っていなかった。
「え?ちょっと待って何これ」
「これでいい。次はそのブレスレットをデュエルディスクのつもりで構えてくれ。ボタンがあるのが見えるか?それを押すんだ」
ここまでくればもうどうにでもなれ、だ。言われたとおり構えてみると、確かにボタン、というよりもむしろブレスレットのデザインの一部のような盛り上がりが見えた。左手ではどう曲げても届かないので、恐る恐る右手でそれを押してみる。
そこから先は一瞬だった。腕輪から半透明の膜のようなものが飛び出て、それが見慣れた形……デュエルディスクのそれへと変化する。よくよく目を近づけて見るとその膜は水でできており、腕輪のある箇所から出て別の場所へ吸い込まれる流動を延々続けていた。
「これが俺が今できる最高の技術、名付けて水妖式デュエルディスクだ。従来の物から金属パーツのほとんどを取り外し、足りない部分は外部から加える水を使い精霊……特に水属性の力を借りてこのように展開する。あくまで試作品段階だからまだ欠点もあるがな」
「水妖式デュエルディスク……」
好奇心に耐えかねて展開中のそれにそっと触ってみるが、間違いなく動き続けている水なのにいくらつついても指はまるで濡れない。デッキから適当にカードを引っ張り出してモンスターゾーンに置いてみると、普通のデュエルディスクを使った時と同じく虹色に光る回路が水面に走り目の前にソリッドビジョンが現れた。カードを離すとソリッドビジョンも当然消え、後には全く濡れていないカードが残る。
「凄い……」
僕にはこの仕組みはまるで理解できないし、多分聞くだけ時間の無駄だろう。この世のあらゆる難しい話は、僕にとっては専門外だ。だけど、目の前の三沢が完成させたこの技術がこれまでの科学の枠を超越した代物だということはわかる。……元の世界に帰ったら、サインとか貰っておこうかな。この技術を発表すれば三沢大地の名前は世界に語り継がれそうだし、そうしたら気軽にもらいに行けなさそうだし。
だが、意外にも三沢の顔は晴れない。これまでの口ぶりや長い前フリから考えるとてっきりもっとドヤ顔してくるのかと思ったのだが、さっきからちょいちょい挟んでくる欠点とやらがよほど気に喰わないのだろう。
と、こちらが何もしていないのにいきなり水の流れが途切れた。新たな水の供給がなくなったデュエルディスクはあっという間に縮んで消えていき、後には元のブレスレットのみが残った。その様子を見た三沢が驚くわけでもなく目を閉じてため息をついたところを見ると、どうもこうな
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