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遊戯王GX〜鉄砲水の四方山話〜
ターン66 覇王の粛清
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は即敗北の掟に従い返しのターンに繋ぐことさえ不可能になる。特大ダメージを受けてなお平然としていられる精神力は、それこそ覇王のように特別な存在でなければ持ち得ないのだ。即座にそれだけ考え、咄嗟に2枚の防御札を使い切る。

 スノウ LP4000→0

「え?」

 斬り飛ばされたスカーの首が、ボトリと地面に落ちる。何が起きたのか把握することもできずただ0になった自身のライフカウンターを呆然と見つめるスノウの前に、バトルを行った2体のモンスターのステータスが表示される。

 覇王 LP400→200
 E−HERO マリシャス・エッジ 攻4200→8000→
 暗黒界の斥候 スカー 守500→2000→4000(破壊)

「攻撃力、8000……?」

 いくら守備力が4000あろうとも、きっかり一撃で初期ライフの全てを削り取るマリシャス・エッジの一撃。敗北の結果を受けて、スノウの体から光の粒子がふわりと飛び出す。その勢いは増し続け、その体が次第に透け始めるのを感情の無い目で見降ろしながら、覇王が手にした1枚のカードを見せた。

「トラップカード、魂の一撃。モンスターの攻撃宣言時に俺のライフを半分にすることで、4000から俺のライフを引いた数値だけモンスター1体の攻撃力をアップさせる。通常トラップカードはセットしなければ発動できないが、俺が最初に発動した速攻魔法……バブルイリュージョンの効果により、このターン1枚だけ手札からトラップをプレイすることが許された」
「そん……な……」

 薄れゆく意識の中で、あることに気づいたスノウが戦慄する。何枚ものカードにより互いのステータスが変化していった結果、受けた貫通ダメージはライフポイントと同じ4000。まさか覇王は、この結果すら想定したうえで、サイコ・ブレイドのライフコストを『1600』としたというのか。始めからワンターンキルのみを想定していたのなら、もっと少ないライフコストでも十分だったはずだ。またオーバーキルする気ならば、上限ギリギリの1900ポイントでもよかったはずだ。だが覇王はきっかり1600ライフを支払い、ジャストキルを達成させた。

「まさ、か……覇王様、貴方は……」

 こうなることすら、全てが計算の内だったというのか。最後まで言い切ることのできなかったその言葉を最後に、デュエルディスクだけを遺して敗者が消える。勝者ただ1人のみが立つ闘技場の中心で、デュエルディスクを収納形態に移行させた覇王が声を上げた。

「いいか、これが敗者の末路だ。貴様らもこうなりたくなければ、出撃の準備を済ませておけ。恐らく逃げ出したネズミは俺の注意を引きつけたいつもりだろうが、人間1人ごときに構ってやるほど俺は暇ではない。今ここに宣言しよう、覇王軍は明日、要塞都市に総攻撃をかける!
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