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遊戯王GX〜鉄砲水の四方山話〜
ターン66 覇王の粛清
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到底思えない。それをどう言おうか迷っていると、三沢が先手を打って周りを見回して見せた。

「言いたいことはわかるさ。俺だって、こんな場所がいつまでも持ちこたえるとは思っちゃいない。だが話によるとここから南に行った先に、覇王と戦おうという人たちが立てこもる最後の要塞都市が存在するらしい。そこにここの人たちを入れることができないか、お前も会ったアマゾネスのエルナが聞きに行ってくれたんだが……」

 そこで言葉を濁す三沢。そうだ、その後のことは僕がよく知っている。アマゾネスのエルナ。誇り高く戦士として戦い散っていき、僕にデュエルディスクを渡してくれた女戦士だ。今はアマゾネスの人たちに彼女のデュエルディスクは返しておいたので、彼女にも墓を作るようなら手を合わせに行こうと心の中で誓う。彼女がいなければ、スノウともまともに戦えやしなかった。

「ごめん。せめて僕が、あと少し早く会っていれば……」
「お前が謝ることはない。タニヤもその仲間も、誰もお前のことを責めたりはしないさ。ともあれ、エルナのデュエルディスクを確認したところ手紙が入っていてな。要塞都市では俺たちのことを歓迎してくれるとのことだから、近々ここは引き払うつもりだ。お前も来い、清明」

 なぜこんな僻地に暗黒界の手の者がわざわざ来ていたのか。そしてそれと時を同じくして、この場所にやってきた僕。頭のいい三沢のことだ、その2つを結び付けてあいつらの目当てが僕であることにはもう察しがついているだろう。それでもなおこうやって言ってくれる、その優しさに対しほんの少しだけ心が揺らぎかける。
 でも、駄目だ。覇王に対してあからさまに喧嘩を売った以上、少なくともしばらくの間は僕の周りがこの世界で一番危険な場所になるはずだ。既に今だって、スノウの報告を受けた悪魔どもがここにめがけて進軍を始めていても不思議はない。もしも僕がここの人たちのことを、三沢達のことを本当に考えてその友情に応えようというのなら、むしろ今すぐこの場所を離れてなるべく目立つようにしながらでたらめな方向に覇王軍を誘導すべきだ。無言で首を横に振る僕を見て、それ以上の説得は諦めてくれたようだ。食い下がることはせずひとつため息をついて、ふと思いついたという風に話を変える。

「そういえば清明、デュエルディスクのあてはあるのか?ディスクを持たずにうろつきまわるなんて、正気の沙汰じゃないぞ」
「うーん……まあ、最悪覇王軍に襲われたどっかの村で家探しでもするよ。ひとつぐらいは動くのも残ってるだろうし」
「乱暴な話だな。少しここで待っていてくれ」

 そう言い残し、ふらりとテントを出ていく三沢。やがて戻ってきたとき、その手には青い金属製の輪っかのようなものと数枚の紙が握られていた。その全身から立ち上る、さあ聞いてくれ!と言わんばかりのオーラに
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