172部分:遺志その一
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遺志その一
遺志
ートラキア城ー
トラキア城に入城したセリス達はレンスターとトラキアの今後を決める為トラキア城の大広間において会議を開いた。会議には解放軍の諸将だけでなくトラキアの貴族達や有力な市民、ブラギ教団の司祭達まで招かれた大規模なものとなった。まずは両国の統治者を誰とすべきかであった。
「レンスターのキュアン王子とエスリン王女の長子リーフ王子こそ相応しい」
これには誰も異存は無かった。トラバント王が倒れこの子アリオーンの行方が知れないとあっては天騎士ダインの妹であり同じく聖戦士の一人槍騎士ノヴァの直系であるリーフは血筋から言ってもまたフリージ家との戦いにおいて開花した彼の能力、王としての資質から言っても相応しいものであった。またフィンやグレイドなどレンスターの遺臣達は皆リーフの部下となりミランダ等他のレンスター系の者達もレンスターの貴族として列せられることとなった。その中にはハンニバル等トラキア出身の者達もおり百年以上の時を経てトラキア半島は再び一つの国家に統一されることとなったのである。しかし一つ大きな問題についての議論が為された。
「トラキアの貧しさをどうすべきか?」
そもそものレンスターとトラキアの分裂の原因は豊かなレンスターへのトラキアの反発がダインの子で第二代トラキア王であったブレスとノヴァの子でレンスター大公であるガウェインとの対立に発展し双方の間で内戦状態に陥ったのをグランベル王国の仲介で講和し二つの国家に分けられたのがそれである。レンスターとトラキアの二つの力により強大な国家が生まれるのを恐れたグランベルの策略であったとも言われるがトラキアの貧しさが発端であったことは事実である。
以後豊かさを求めて北へ侵攻しようとするトラキアとそれを防ぐレンスターとの間で頻繁に衝突が起こった。それがグングニルとゲイボルグの悲劇の由来でありトラバント王が梟雄と呼ばれた元である。だがトラキアの痩せこけ岩石と砂塵ばかりの地は米も麦も育たず険しい山々には羊も山羊も放牧出来なかった。その為人口も他の国々と比して少なくこればかりは神々の力をもってしても不可能と言われていた。これをどうするか。セリス、リーフをはじめとする一同の考えがそこに集中した。
「私に考えがある」
レヴィンが前に出て来た。そして懐からあるものを取り出した。それは黄土色でマルク所々ゴツゴツしたものであった。
「ジャガイモ・・・・・・」
「そうだ。知られていないがこれは痩せた土地でもよく育つ」
リーフに答えた。そしてまた懐から何かを取り出した。今度は赤く丸いものだった。
「トマトだ。これも高い山々で栽培出来る。他に唐辛子や高山で簡単に栽培出来る様々な作物や薬草の種を持って来た。他にもトラキアの険しい山でも放牧
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