序章 二人の出会い - 森の町チェスター -
第2話 自然地理
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底も陸上と同じように山や谷があり、火山活動すら存在すること。固体である岩石も長い年月で見れば液体のような振る舞いをするので、きっと海底は動いているであろうこと。理論上では海嶺――海の中の山脈にて地面が生まれているであろうこと。海溝は逆に地面が沈み込んでいる海の墓場であろうこと。
そのようなことを、シドウは詳しく説明していった。
ティアは初めて聞く話であるためか、ときおり質問を挟みながら、興味深そうに聞いていた。
「面白かった! なんでシドウはそんなことを知ってるわけ?」
「師匠から教わったんだ」
「誰なの? 師匠って」
「大陸最南端にペザルという港町があるんだけど、そこのピーターという先生」
「聞いたこともないけど。有名な人? どんな武術が専門の先生だったの?」
「自然地理学」
そう答えた瞬間に、ティアの首が進行方向からシドウのほうに勢いよく回転した。
「は? 何それ?」
表情も怪訝なものに様変わりしている。
「地形学や気候学、動植物の生態学などをひっくるめた学問。あ、でもあの先生は他にも色々やっていて、古生物学や物理学も――」
「じゃなくて。それ武術と関係ないじゃないの」
「師匠は学者だから」
「なんで冒険者になるのに学者に弟子入りするの? 変なの」
「十歳のときに、母さんにそうしろって言われてね。そのとおりにした」
「うわあ、服ダサい上にマザコンかー。最悪!」
「……」
シドウが黙っていると、ティアはクスッと笑い出した。
「何かおかしい? ティア」
「ギルドでもそうだったけど、バカにされても怒らないよね。冒険者って、プライド傷つけられるとすぐ喧嘩になるのに」
「少しムッとしているつもりだけど。そう見えない?」
「全然!」
「あっそう。まあ、俺は母さんから『どんなときでも人間の味方を』と言われているから」
「またお母さんかあ……。でも、地理学って地名を覚えたり町の特徴とかを勉強するものだと思ってた。それだけじゃないんだね」
「そっちは人文地理学のほう。同じ地理学でも違う」
「へえー。でもその人文地理学というやつのほうが冒険者としては役に立ちそうだけど。自然のことなんて勉強して何か役に立つの?」
「わからない」
「え、わからないんだ?」
「うん。やっぱり、わからないな。今わかっているのは、そういう大きなことを勉強していると、些細なことが割とどうでもよくなるっていうことくらい。たとえば、同い年の冒険者にバカにされても殴りたいとまでは思わない、とか」
「あ、今わたし、嫌味を言われた?」
「いちおう言ったつもり」
「うふふっ」
なんで嬉しそうなんだ――シドウは突っ込もうとしたが、その前に森の道は終わり、視界が開けた。
「あ
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