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ガンスリンガーガール短編
平均的なイタリア人男性
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が、あの黄色い猿どもの車に劣るだと、くそおおっ!」
 普段冷静で優しいジョゼの目に次第に狂気が宿って行く。
「その腐れ縁が切れずに、今度も実験の参加を捻じ込まれたって訳さ…… ヘンリエッタ、君に分かるか? この悔しさが、君もイタリアで育ったなら分かるはずだっ!」
 もう泣きながらヘンリエッタの肩を掴み、前後にガクガクと揺さぶっているジョゼ。そして幼い少女には言ってはならない汚い言葉を使ってしまう。
「お前の体はなっ! あのサルどもの中で特に卑劣な、HONDAに作られたんだよっ! 我らの聖地であるモンツァやイモラで1,2フィニッシュを決めた、あの汚らしい白赤の車と同じ……」
 目の幅もあるような滝涙を流しながら、絶句してしまうジョゼ。拳で床を殴り、次第に血が滲んで行く。
「Do You Have a HONDA?」
「夢をありがとうっ」
 ジョゼの余りの剣幕と絶望の深さを見て、あらぬ事を叫んで驚く二人。
「だが今は違うっ! 今のレギュレーションでは我らのスクーデリアは無敵だっ!」
 ジョゼが上着とワイシャツを脱ぐと、その下から真紅に染め上げられたシャツが現れ、胸には公式ロゴで「Ferrari」のと印刷された文字があり、完全にアッチの世界に行った目付きのまま、イタリア国家を斉唱し始めた。
「ジョゼさん……」
 壊れてしまった主を見上げて泣いているエッタと、ドス黒い表情でニヤニヤ笑っているリコちゃん。そこでジョゼの背後に人影が現れ、背中にスタンガンを押し当てて昏倒させた。

「一応説明しておいてやろう、イタリア人の男は、「フェラーリがレースで負けた時」「オリンピックやワールドカップでイタリアサッカーチームが負けた時」「母親が死んだ時」この3つの「事故」があった場合、我を忘れて暴徒と化す事が法的にも認められている」
((ぜってー嘘だ……))
 ジャンのおちゃめなイタリアンジョークを理解できず、呆然としている二人。
「二人共、今日見た事は忘れるんだな。 でなければまた、条件付けのページを増やして寿命を縮める事になる、分かったな?」
「「は、はい……」」
 弟を肩に担いで去って行くジャン。性能の良い目を持っていたヘンリエッタは、ジャンの肌着も赤である事と、背中にジョゼのシャツ同じ文字が印刷されているのが見えた。
「昨日はセリエAだったのに……」
 ちなみにその時、ジョゼが見ていた悪夢は、フェラーリがピット出口で「ドライブシャフト」を落としてリタイアし、兄と一緒に泣いた瞬間が脳裏で再現されていたと言う……

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