暁 〜小説投稿サイト〜
艦隊これくしょん【幻の特務艦】
第三十八話 ミッドウェー本島ヲ攻略セヨ(Final)
[6/8]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
なくなった。
「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・・どう!?」
したたり落ちる汗をぬぐいながら讃岐が身構えた。
「・・・・・駄目だわ。」
尾張の手を握りながら紀伊がつぶやく。そのつぶやきには絶望が漂っていた。
深海棲艦はあちこちに傷を負いながら、なおも健在だったからである。ただ、主砲塔は完全に壊れ、背後の三頭獣は傷を負って呻いていた。
「もう砲弾もない・・・航空支援もできない・・・艦載機も放てない・・・・。これだけ攻撃しても倒れないなんて・・・。もう、駄目なのかも・・・・。」
「紀伊・・・。諦めないでよ。」
尾張が前を向いたまま紀伊の手を握りしめた。
「あきらめたら承知しないわよ。あなたは私の姉妹、双子なのだから。」
「尾張・・・・。」
尾張の胸が上下している。傷を負っていても、その眼差しの強さはいささかも衰えていなかった。
「頑固で諦めが悪いのが、私たちの特徴でしょ?」
あぁ、と紀伊は思わず笑ってしまった。こんな時だというのに。
「そうよね、それが私たちなのだものね。でも・・・・。」
紀伊は嘆息した。
「もう、打つ手はないわ・・・・。ここまで戦っても、撃沈できないなんて・・・・。もしかして、普通の戦い方ではだめなのかも・・・・。」
最後はつぶやくように言って考え込んだ紀伊は尾張の表情を見ていなかった。
「そう、普通の戦い方では、あいつは追い落とせない・・・・。」
「尾張?」
すっと手がほどかれ、紀伊から離れた。
「砲が使えなくなっても、艦載機が放てなくなっても、魚雷が撃てなくなっても・・・・まだ戦える!!!」
尾張が叫んだかと思うと、不意に全速力で走り出した。
「尾張?!」
一瞬尾張が立ち止った。本当に一瞬だったが、時が静止したように紀伊には思った。それくらいあたりは静まり返っていたのだ。


そして何とも言えない穏やかな顔をして紀伊を見、ぶつかるようにして紀伊を抱きしめてきた。


「お、尾張!?」
すっと尾張が離れ、紀伊に穏やかに、だが、一語一語刻み付けるように話しかけた。
「紀伊、あなたは臆病で、ドジで、天然で、卑屈で、とてもイライラさせられて、最初は嫌だったわ!!」
「な、何を!?」
「でも、今は違う。私は、あなたの妹であれて、とても良かったわ。ありがとう・・・・。」
「尾張、何を言って――。」
「私なんかよりも、あなたの方がずっと必要よ。・・・讃岐!!!」
「な、なによぉ!!」
声に応じてやってきた讃岐に、
「紀伊を頼んだわよ。」
そういって突き放すようにして讃岐に紀伊を預けた尾張は、
「・・・・さようなら。・・・紀伊、姉様。」
「尾張?尾張!?」
紀伊が叫んで、飛び出そうとしたが、推進装置が壊れてしまって足が動かない。
尾張は風を切って深海棲艦の懐に飛び込むと、
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2025 肥前のポチ