169部分:三頭の竜その二
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三頭の竜その二
ートラキア城ー
グルティア城陥落の報はすぐにトラキア城のアリオーンにも届いた。アリオーンはその報を今は主のいない王の間で聞いた。
「そうか、遂に来たか」
トラキアの諸将が立ち並んでいる。アリオーンは部屋の丁度中央に立っている。その手には父より授けられたグングニルがある。
「そしてシアルフィ軍から講和の使者が来ておりますが」
騎士の一人が報告する。アリオーンはその報告を冷めた顔で聞いている。
「何度来ても同じ事だ。帰るよう伝えよ」
「ハッ」
騎士は敬礼をし部屋を後にする。扉が再び閉められた後彼はトラキアの諸将達の方を向いた。
「諸将よ、聞いての通りシアルフィ軍はグルティアまで達した。このトラキアまで迫るのも最早時間の問題だ」
さらに続ける。
「だが勝機は我等にある。兼ねてより計画していた『三頭の竜作戦』を今発動する」
諸将が敬礼する。
「この作戦の成否に我がトラキアの命運がかかっている。健闘を祈る!」
「ハッ!」
諸将はアリオーンの言葉が終わると同時に敬礼し一斉に消えた。後にはアリオーン一人残った。
「アルテナ、行くぞ・・・・・・」
彼はポツリ、と言うと部屋を後にした。部屋にある玉座は主もなく寂しげに置かれていた。
ーグルティア城ー
「そう、やっぱりトラキアは講和には応じなかったか」
セリスは天幕の中で残念そうに言った。
「ああ、取り付く島も無い。こちらの要求など全く耳を貸そうとしない。アリオーンは一体何をムキになっているのか・・・・・・」
レヴィンが苦々しげに言った。
「アルテナの気持ちを知らない筈はないのに・・・・・・。やはり戦わなくてはならないんだね」
「ああ。こうなればトラキアまで攻め込む。そして決着をつけるぞ」
「セリス様、トラキアが動きました!」
デルムッドが入って来た。
「来たか。それでどう動いたの?」
「ハッ、ミーズ、カパドキア、ルテキアにそれぞれ五千の兵を向けトラキアには六万五千の兵を配しております。兵種は全てドラゴンナイトです」
「そうか・・・・・・。よし、我々も行こう。そして勝利を手にするんだ!」
セリスの号令一下解放軍はトラキアへ向けて進軍をはじめた。その動きはアリオーンも見ていた。
「よし・・・・・・。作戦通りに行くぞ」
アリオーンも竜に乗った。そしてトラキア城を後にした。城を振り返って見た。
(この城を見るのもこれが最後かもしれないな)
ふとそう考えた。だがすぐに向き直り天高く舞い上がっていった。
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