暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアートオンライン 無邪気な暗殺者──Innocent Assassin──
OVA
〜暗躍と進撃の円舞〜
暗謀転身
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る大きな三角耳をぱたぱたさせながら、アリシャは唸る。

この場合、中途半端な策が一番危険だ。信用を落とし、噂も流されるダブルパンチになりかねない。

切り札(カグラ)はあるのだ。

あとはそれを相手のクリティカルポイントに叩き込むだけなのだが……。

「それができないから苦労してるんだけどナー」

「は?」

ぼそりと呟いた領主の言葉に首を傾げる部下に「何でもない」と適当に手を振ってアリシャは天板に上半身を投げ出す。

領主の痴態に、しかし誰もが何も言わない。普段の彼女の言動から慣れているというのもあるし、何よりそうなるのもやむなしと分かっているのかもしれない。

―――結局はそこ。真犯人の種族が分かりさえすれば、後は何とか行けるかもしれないんだヨ。

だが、絞り切れない。

ほぼシロに近いと検討づけているサラマンダーを抜きにしても、残りの容疑者は七種族にも上る。そして、この場合の読み違いが致命的なのは言わずもがなだ。

種族の命運を分ける決断。

その重みに思わず身を震わせる一同だったが、その空気は新たな闖入者で切り裂かれる。

バン!!と。

執務室の大扉。それを半ば体当たりするように開け放ち、毛丈の長いカーペット上にもんどり返ったプレイヤーがいた。

間違っても精悍という感じは取れない、ケットシーにありがちな極めて平凡な矮躯だ。髪型も、そんな凡庸さから脱しようとしてところどころハネてはいるが、覚悟足らずで中途半端なことになっている。

身に纏うは、各所にセットするタイプの軽装鎧で、防御より敏捷力を重視したその装備は戦士(ファイター)というより盗賊(シーフ)という印象が強い。

だがそのどちらにしても、こちらを見上げた垂れ目が台無しにしている。どう見ても、武官より文官、という感じが否めないからだ。

……というか。

床に顔面を強打した少年を見たアリシャは、素っ頓狂な声を上げた。

「フニ君じゃない。どうしたの?確かキミには、フェンリル隊に合流して迷子捜しを手伝ってあげてって言ってたはずだヨ?」

本アバター名は……忘れたが、頼れる執政部の新人君だ。

彼はサラマンダーの交易キャラバン襲撃事件の後詰め調査の隊長として任命していた。その後ウンディーネに襲撃されて死に戻りした後は、人員不足なフェンリル隊の方面に応援に行って貰っていたはずだ。

―――命令違反?

だが、それは彼とは宇宙一縁がないような言葉だ。何か明確な理由でもなければ、この牙が最初からないポメラニアンみたいな少年がそんなことをする訳がない。

眉を顰める執政部の面々に向かい、しかし息も絶え絶えな少年はまったく予期せぬことを言った。

「わかっ……わかりました!判ったんですッ!」


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