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暴れん坊な姫様と傭兵(肉盾)
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の意思一つで決まって、俺の意思で物事(ものごと)が動く。 貴族にもなっておらず、身内ですらなく、ましてやロクな権限もない奴が―――なに好き勝手な事をしてるんだ?」

 あっ……察した。

 これ、重圧だ。

 信じられないけど…エルザ姫から、踏み潰すかのような威圧感が放たれている事に気付いた。
 エルザ姫が暴力的なのは拳だけではなく、存在感そのものまで暴力的だった。

「あ……ぁ…あ………あが…それ、は……」

 戦場にも慣れていないような男も、その重圧に耐えられず口が麻痺したかのように返事を返せなかった。

「わからないか? 理解出来てないか? なら俺様が教えてやる」

 ヒェ……。

 ゾクリ、と僕の背中がビクついた。

 エルザ姫から、獲物を(なぶ)る猛獣のような気配が感じられてしまった。
 狙いはそこにいる男だとわかっていても、弱気の虫がざわざわしてしまう。

「お前は自分で偉いとでも思っているようだが、そんなわけがないだろ。 この国において法を超えた横暴が許されるなどと、誰がそんな事を吹き込んだ? 親か?部下か?取り巻きか?それともお前の自尊心か?」

 (たた)みかけるような言い方は、とても威圧的。
 だが裏付けされた理性的な物言いに加えて、明確な格差が有無(うむ)を言わせなくさせていた。

「この国ではな、正当な権利と権限を持つ者でなければ勝手は許されねぇんだよ、例え国王でもだ。 知らなかったか?」

 ハッキリと、貴族の何をしても許される横暴さに喧嘩を売るような発言だった。
 それはほとんどの国が民と貴族で分かれているという現実に対して挑戦的でもあった。

 エルザ姫はその体現(たいげん)と言わんばかりに強気な姿勢を(しめ)していた。


「―――それがデトワーズ皇国だ。 俺の国だ」


 お、雄々(おお)しい…。

 有無(うむ)を言わせない状態で一方的に言っているだけだけど、その(あふ)れるほどの自信のある姿は素直にカッコいいと思えた。



「そして、もう一つ大事な事を教えてやる」
「も、もう一つ……?」


 エルザ姫が男の前に立った。

 あと一歩で“手が届く”かのような距離にまで近づいて、ニヤリとエルザ姫が笑みを浮かべた。

「それはな……」

 そして僕は見た。
 更にもう一歩、彼女が踏み込むその直前…あの拳を握り込むのも見た。




「世界で一番―――俺様が正しいんだよ!」


 その瞬間、拳が(うな)った。

 エルザ姫陛下の握られた拳が男の顔にめり込み、殴り飛ばす…わずか一瞬の出来事。
 男は反応する事も出来ずに、あの冗談みたいな一撃を喰らって……自分の横を通り
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