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試験的特例近衛というエルザ姫の従者という扱いになってるだろうから直接赴くという選択肢もあった。
だが“あの”姫様に対面するのはちょっと躊躇われた。
間に誰か入ってもらえないかな〜、という気持ちも混じっていて、二の足を踏んでいる。
そんな時だった―――。
「おい貴様、そこで何をしている?」
「はひぃい!?」
僕は思わず条件反射で身が竦んだ。
高圧的で、上から物を言う態度、攻撃的なその声は自分の染みついた危機感が素早く反応した。
振り返ればそこには一人の男―――貴族だ。
「き、き、き…貴族様……」
僕は声が震えていた。
上等な服。
腰に提げた派手な剣。
胸を張った佇まい。
汚れていない顔。
見下すような視線。
自分のような格が下の人間からすれば、それら全てが委縮させる印象となって目の前にいた。
「こ、これは……その、あの…」
緊張と恐れと、染みついた小物根性のせいで、何か言おうとしてもしどろもどろになってうまく説明のしようが出来なかった。
「何をしているのかと聞いている。 それすら答えられないのか、この平民が」
「い、いえ…これは…僕は傭兵で…でも今は……その、ひ、姫様に呼ばれたからで…」
「はぁっ? 貴様のような奴に? 戯言も大概にしろっ」
貴族の男は僕の足元を見て、そう切って捨てた。
人を見るのは足元から、そこから育ちの良し悪しはすぐにわかる。
自分の靴はヨレヨレにくたびれていて、予備もなければ新しく買い替える余裕もないのがすぐわかる。
その時点で、自分の言葉には信用するに値しないのだと、あからさまに表情に表れていた。
「出てけ」
そして、短い一言を告げられた。
「え…あの…」
「出てけ、と言った。 聞こえなかったか」
貴族らしく、横暴に、耳も貸さず。
ただ自分が目障りだから一方的に、言葉だけで視界から排除しようとしてきた。
そして…僕はそれに逆らえない。
言い返すだけの力も、金も、地位も、持っていないからだ。
「牢にぶち込まれたいか!」
「ひぃいっ…す、すみません…!」
腰を折り、頭を低め、申し訳なさそうに自分の非を認めた。
そうすれば被害を受けない…そう納得して、この場は逃げるように立ち去る他なかった。
貴族の男は鼻を鳴らし、当然だろう、と言わんばかりに見下した視線
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