巻ノ七十七 七将その十二
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「おかしなことになる」
「動かれるやもですが」
「動かれては、ですな」
「かえって危うくなる」
「そうなりますな」
「そうなると思う、とかくこのことは豊臣家にとってはまずい」
実にというのだ。
「このことも父上にお知らせするが」
「しかしですな」
「このことは」
「大きい」
十勇士達に言い切った。
「豊臣家、天下にとってな」
「趨勢に大きく影響する」
「それ程までに」
「ここで治部殿が大人しくなって下されば」
どうなるかもだ、幸村は述べた。
「いいのじゃが」
「豊臣家の為にですな」
「そうして下されば」
「豊臣家は執権になる方がそのまま残り」
「天下人でなくともですか」
「家を守れますか」
「それが出来るが」
しかしというのだ。
「それが出来る方でもない」
「ご気質故に」
「どうしても」
「また動かれるであろう」
ここで引っ込んでもというのだ。
「すぐにな」
「あの方がもう少し穏やかならば」
「そもそもこうしたことになりませんでしたし」
「これからもですな」
「厄介なことになりますか」
「残念なことじゃ」
石田の優れた資質と一本気で裏表のない気質の双方を知っているからこそだ、幸村は嘆息したのだった。
「生き急いで死に急ぐ」
「そうなりますな」
「どうしても」
「あの御仁は」
「そう思う」
幸村は石田のことを想い無念に思った、彼を知っているが故に。だが伏見城からの報は次から次に入ってきていた。
巻ノ七十七 完
2016・10・15
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