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異伝 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(ヴァレンシュタイン伝)
困ったチャン騒動記(4)
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ネセン  オスカー・フォン・ロイエンタール



結局俺は何もできなかった。日々エーリカを想いながら悶々としている。そんな俺に転機をもたらしたのはエーリカのドレスを作った店のオーナーだった。
「エーリカにモデルになって欲しい?」
「はい、如何でしょうか」
オーナーがにこやかに微笑んでいる。

エーリカがオーナーの店でドレスを作って以来、店に来る客が増えているらしい。この店はハイネセンでも有名な店なのだが、それは有名下着の店としてだ。ドレスやアクセサリー等ではこの店より知名度の高い店は幾つかある。

オーナーはそれを残念に思っている。そしてエーリカの力で店の格を上げる事を考えたらしい。総督夫人御用達の店、それを全面的にアピールしたいのだ。

「しかし、総督夫人は公人です。民間の企業や商店のモデルなど出来る事では有りませんぞ、閣下」
「モデルと言いましてもドレスとアクセサリーを身に着けていただきまして何枚か写真を撮らせていただきたいと言うだけです」
「そういう問題ではない」

ベルゲングリューンが表情を厳しくさせている。確かにその通りだ、オーナーの気持ちは分かるし世話にもなったから協力したいが難しいだろう。しかし、ドレスか……。場合によっては買っても良いだろう。これからもパーティは有る。そうすればオーナーも喜ぶに違いない。

「ちなみにどんなドレスなのだ」
脈ありと見たのかも知れない、意気込んでオーナーが話し始めた。
「それは何と言ってもウェディングドレスでございましょう。女性にとっては特別なドレスでございます」

ウェディングドレスか……、それでは残念だが買えんな……。
「奥様なら大変お似合いになります」
「……残念だがそれはやはり無理だな」
「左様でございますか……」

オーナーががっかりしている。
「一度で良いから奥様のウェディングドレス姿を見てみたいと思ったのですが……」
「……」
エーリカのウェディングドレス姿か、確かにそうだな、見てみたいものだ……。なるほど、そうか、その手が有ったか!

「オーナー、卿のところは結婚式も挙げられるのかな?」
「それは出来ますが」
「ならば俺とエーリカの結婚式を挙げたいのだがな」
「なんと!」
「閣下!」

そうだ、結婚式だ。俺とエーリカは結婚式を挙げていない。だからハイネセンで式を挙げても少しも不自然ではない。結婚式を挙げそして彼女に言うのだ。お前を愛している、本当の妻になってくれと。これ以上の言葉は有るまい、神の前で誓うのだ。エーリカもきっと俺の気持ちを分かってくれるに違いない。

「閣下、それは本心で言っておられるのですか」
ベルゲングリューンが問いかけてきた。周囲を見るとオーナーは嬉しそうにしているがゾンネンフェルス、シュラー、
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