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ファイアーエムブレム聖戦の系譜 〜幾多の星達〜
163部分:聖斧その一
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聖斧その一

                     聖斧
 グランベルが共和制となる以前よりイードはイザーク、レンスター、シレジア、そしてグランベルを結ぶ交通の要地として知られていた。オアシスを中心として成立したフィノーラ、ダーナといった街は商業、そして交易上重要な拠点であり栄えた。とりわけダーナはイザークとレンスターの間にあり西にグランベルへの道が開けていることもあり繁栄していた。
 その為ダーナやフィノーラが戦乱の渦に巻き込まれる事も度々あった。先の大戦でのシグルド率いるシアルフィ軍とヴェルトマー及びトラキア軍との戦いもそうであったし今回のセリス達のダーナでの戦いもそうである。先の聖戦においても幾多の激しい死闘が繰り広げられその中でも十二聖戦士達が十二柱の神々より神器を授かった『ダーナ砦の奇跡』はとりわけ有名である。
 聖戦により暗黒教団が倒れグランベル帝国となるとミレトスと同じくそれぞれの都市が自治権を持つ自由都市となった。これがブラムセルに代表される豪商やジャバローなど傭兵を産む土壌となった。
 ブラムセルの死によりダーナはセリス率いる解放軍の勢力圏となった。フィノーラはシレジア解放軍に協力すると宣言しダーナの北と東と南は完全に帝国から離れた。西部の都市も先の大戦のアルヴィスの密約が公表されると次々に帝国から離反しいまだ帝国についているのは以前よりヴェルトマーと親交のあった数都市のみでありこれ等の都市も何時離反するかわからない状況であった。これに対して国内も政情が揺れ動いている帝国には打つ手がなくシレジア総督ムーサとドズル家の嫡男ブリアン公子が率いる十万の軍が僅かに残った親帝国の都市を補給路としてダーナを攻めさせるだけであった。宮廷を出奔した司祭サイアスの追撃を名目としたこの出兵はトラキアと対峙する解放軍の後方撹乱及びイードの諸都市への示威行動がその目的であったが帝国の支持の失墜、補給路の脆弱さ、解放軍との兵力差からあまり効果が期待出来る作戦ではなかったが追い詰められつつある帝国にとっては起死回生の作戦であった。砂塵の舞うダーナで今再び戦いの幕が開こうとしていた。
ーダーナ南西ー
 ダーナ南西の砂漠を進んでいく軍があった。緑地に白い風を描いた紋章が飾られている。十二聖戦士の一人風使いセティの血を引くシレジア王家の軍旗である。
 その旗の下に彼はいた。かってシレジアで総督を務めていたムーアである。軍旗から彼もまたレヴィンやセティと同じくシレジア王家の血を引く者であるとわかる。先の大戦においてレヴィンと王位を争ったマイオスの長子でありレヴィンとは従弟にあたる。彼がバーハラの士官学校にいる時シレジアで王位継承権争いが起こり父は死んだ。帝国がシレジアを滅ぼすと総督に任じられた。
 彼は総督になると帝国に倣った厳格な法治主義で国を治
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