161部分:父と子とその三
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四散し砕け散った。
出て来る敵兵はまばらだった。解放軍はトラキア兵達を斬り伏せ或いは捕虜にし次々と要所を押さえていった。
扉をノックする音がした。
「どうぞ」
入って来たのはディスラーだった。深刻な顔をしている。
「シアルフィ軍が来たのですか・・・・・・!?」
コープルの言葉にディスラーは無言で頷いた。
「城の要所が次々と押さえられている。すぐにこの内城に来るだろう。コープル、早く安全な場所に隠れなさい」
暗いが落ち着いた口調である。コープルはそれに対し首を横に振った。
「どうした?」
「皆が戦っているのに僕だけ隠れているわけにはいきません。僕は戦えませんが杖で皆の傷を治したいです」
「そうか」
ディスラーは微笑んだ。そしてコープルに別れを告げると部屋を後にした。
(ハンニバル殿は幸せだ。あれ程立派なご子息がおられるのだからな)
彼は階段を降りながら心の中で言った。城内では既に剣の撃ち合う音や怒号が聞こえてきている。
廊下に出た。前に若い黒髪の騎士が立っている。
「敵将とお見受けする。我が名はラインハルト。解放軍の将の一人」
「ほお、卿があの高名な。我が名はディスラー。トラキアの将だ」
彼はそう言うと腰から剣をゆっくりと抜いた。ラインハルトも構えを取った。
「参る!」
両者は剣を撃ち合った。二つの影がぶつかる。
ルテキア城は完全に制圧された。トラキア軍の殆どの兵は捕虜をなりコープルも無事保護された。
「君がハンニバル将軍のご子息だね。僕は解放軍のセリス、話はシャルローから聞いているよ」
セリスはコープルに対し語りかけた。
「シャルロー、上手くやってくれたんだね」
「じゃあ行こう。カパドキアで将軍が待っている」
「待って下さい、その前に」
「その前に・・・・・・?」
コープルは右手に持つ杖を掲げた。
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