未来へ進む子供
[3/3]
[9]前 最初 [2]次話
いっても聞いてくれねえんだろ?」
「ええ聞きませんよ」
「笑顔で肯定すんなよ……ああもう解ったよ!それでいい、それで手を打つよ!!」
もう参ったよそれでいいよ!両手を上げて降参するオルガに思わず周囲からから笑いが零れた、オルガは笑いつつ悔しそうにまた交渉で負けちまったよと呟く。こういった交渉は良くするがオルガは院長にこの手の事で勝てた為しがない、頑固で意見を曲げないがそこには何時も自分達に対する愛情が必ずある。それを覆したら愛情を否定してしまうのかもしれないという思いもある為にオルガは勝てない。だがこのやり取り自体が楽しい、だからやってしまう。
「さて今日はご馳走にしましょうか、何が良いですか?」
「はいはいオレ、煮込みハンバーグ!!」
「ああなら俺えっと…ハンバーガー!」
「似たようなもんじゃねえか?!俺ピーマンの肉詰め!」
「俺ミートボール!!」
「なんでお前ら全員引き肉料理オンリーなんだよ!?」
「じゃあ俺、くらげとデーツの酢の物和え」
「お前はお前で渋すぎるわミカ!!」
「はいはいじゃあ私が食堂に行くまでに決めておいてくださいね」
喜び勇んで食堂へと向かっていく子供たちを見て思わず笑みが零れる、青年になっても大人になって自分にとっては大切な子供、それは変わらない。そんな子供に出来るだけの愛情を注いでやらなくてはいけないと思い続けている、席を立ち上ろうとするとコンコンコンとノックの音の後に扉が開いた。
「人気だな、少し嫉妬してしまったよ」
「貴方の子供であるんですよ?大目に見てあげてください」
「解ってるよでも、貴方は私の夫だ、少しぐらい嫉妬してもいいだろう?」
扉を開けたのはスラリとした長身で背中まで伸びた金色の髪が美しくトップモデルも霞そうな美女、彼女はそっと椅子に座っている院長である夫に近づき口付けをする。貴方は私の物と主張するように。
「お仕事お疲れ様です。サムス」
「ああ、後でマッサージをお願いしてもいいかな、久世」
もう一度確かめ合うようなキスをすると院長、久世は立ち上がりつつ妻の腰に手を回してそのまま部屋を出た。すると自分らを見つけたのか一人の少年が駆け寄って来た。
「父さん、母さん!ご馳走作るんでしょ!?俺にも手伝わせてよ!料理したいんだ!」
「作る物は多分バラバラだから大変だろうしな」
「ええ、手伝ってくれます?」
「ああ勿論!父さんと母さんの役に立てるんなら!」
「助かりますよ―――一夏」
狂っている世界の中で、一つの世界は動いている。暖かな愛に包まれた世界が。
されどその愛の中には歪な愛もある、それはどんなものを生みだすのか……。
[9]前 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ