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【IS】何もかも間違ってるかもしれないインフィニット・ストラトス
第百三六幕 「アニンバイテッド・ゲスツ」
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内を明かさないつもりか、それともこうして粘っていれば先にこっちのエネルギーが尽き、なおかつイタリア軍はまだ到着しないという計算があるのか。おかげでどんどん口数ばかり増えていく。
 ……エマージェンシーコールは届けた。返答もあった。されどイタリア軍は来ない。やはりこれは何らかの足止めを食らってるとみていいかな。アルキミアの展開はほぼ確定らしい。ちくせう、本当にヤだけど背に腹は代えられぬ。

「ところでさぁ。ベル君と事件の話、まだ途中だったよね」
「知らずに死ねば?」
「10人死んだんだってね」
「そうよ?10人。実質的な犠牲は3人だけど、そんなことも貴方は知らないわよね。ベルーナの隣にいるくせにさ?」

 じゃかり、と彼女のライフルに弾丸が装填される。

「馬鹿な貴方には分からないでしょう?いいえ、馬鹿でなくても分からないわね、訂正するわ。ベルーナと私の決して切れない繋がりは、貴方が数か月間積み重ねたそれとは訳が違うのよ」

 舌の滑りがよくなってきている。肉体的には腕利き操縦者で精神は病んでいるけれど、年相応だ。年相応に自分の存在や理屈を誇示し、自分が上だとマウンティングしたがる幼稚な精神性が抜けきっていない。やがて彼女は、きっと言いたくて言いたくてしょうがなかったであろう言葉を口にした。

「教えてあげる!!私が11歳のときにパパを殺したのはねぇ――」







「ベル君だった。違う?」







「――知ってて隣に、いるっていうの?」

 多分初めてだろう、彼女は唖然とした顔を見せた。そんな筈はない、何故だ、理解できない――私が彼女に向けた感情と同じものが、彼女に浮かんだ。

『……マスター』
『ごめん、何も言わないで』

     ぱちり(・・・)

 別段、知ってた訳じゃない。

 ただ、彼女の言葉の節々には愛憎が見え隠れし、ベル君の本性とかやったことという言葉を使っていた。怒りを通り越した感情を抱くためには、只事では至れない。

 ベル君の過失によって死んだという話かと最初は思っていた。恨むのは理屈では分かる。でもそうであるならば、それは子供のやったことだ。イタリア軍や役人といい周囲といい、そこまで口を噤んでひた隠しにすることとは思えないし、彼女の態度を見ていると予測が少し外れている気がした。

 そして、ベル君の深刻だったトラウマ。暴力に対する、ある時からぴったり止まった恐怖の感情。理屈ではロジカルに並べられない様々な情報を並べているうちに、使徒を倒し敵を襲った「あのとき」のベル君が脳裏に浮かんだ。
 自分のせいで人が死ぬ。なるほどショックだろう。状況によってはトラウマものだ。でもベル君はなんというか、辛い過去と現在の思考が必ずしも一致しない曖昧
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