第一部
1章:新天地の旅
2話 始まりの光
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で、エドアルドの中からここが天国へ向かう通り道だという考えは完全に消え去った。
またしても答えは消えてしまったが、しかしそれはもうどうでもいいこと。エドアルドはいつもの様に、自らの腰にある剣の柄に手を添える。
柄の頭から鞘の尻、いまは見えない刀身まで、光が反射しないほど真っ黒に染められたその剣の名前は『空心』。エドアルドの居た国――ウェルクセルにて造られた、刃が細かく振動することで圧倒的な切れ味を生み出す高周波ブレードの一振りだ。
ひとたびそれを震えば、人体などは言うまでもなく、分厚い鉄板ですら難なく切り裂けてしまう。それでいて羽のように……とまではいかないものの、相当な軽さをほこるのだから暗殺には最適な武器だろう。
エドアルドも何度となくお世話になっており、その威力に大きな信頼をおいている。
――気は抜かないように……でも、果たして話の通じない相手に対してどう出るべきか。
何をされるかはわからないのだから気を配ることは忘れず、しかしいまエドアルドには指示がない。スーツ越しの視界に浮かぶ、幾つものオンライン情報を映す仮想ウィンドウには『圏外』と表示されていて、自国に指示を促すこともできない。
つまりエドアルドは、話の通じない人間相手に自分の意思で行動することを迫られているのだ。それはもちろん、これまで兵士をやってきた彼にとっては初めてのことである。
――考えている暇も無い……か。
黒い粒はエドアルドは確認にされた瞬間から、それまでとは比べ物にならないほどの速さで拡大を始め、浮上していく彼の行く手を侵食していく。暖かさも消え始め、ひんやりと埃っぽく、書物の匂いをふんだんに蓄えた空気に包まれる。
そして光が完全に消えたとき――エドアルドの体は、薄暗くバカでかい、円形の部屋の中にあった。
「kssiffnla!!」
「ksla!」
「ksla!」
そこにいたのは、両手を何度も上げて喜びを示している二十数人の男たち。しかし彼らの言葉は何一つとして理解できず、笑顔で涙を流している者の存在から、エドアルドは自分が現れたことに何か特別な意味があるのだろうと理解する。
地面には、部屋の形に沿って余すところ無く描かれた不思議な文様。四角形と三角形、円と文字らしきクネクネのパーツだけが使われていて、ほんのり光っていることから神秘的な雰囲気を醸し出していた。
記憶の底を漁ってみると、このゴツゴツとした石レンガの地面に描かれている文様はエドアルドも似たようなものを見た覚えがある。
――魔法陣……ってやつか。
はるか昔の時点で科学によって淘汰された『魔法』。その夢を追う者が書いた本で魔法陣と呼ばれていた模様に、地面のそれはピッタリ当てはまる。そ
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