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異伝 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(ヴァレンシュタイン伝)
困ったチャン騒動記(3)
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ていますかな?」
「……」
俺が沈黙するとシェーンコップはシニカルに笑った。
「やはりそうですか、彼女がしつこく迫ったのもその所為ですよ。あそこまで無視されれば意地になります。まあ私は感謝されてもいいと思いますな」
「……有難うとでも言って欲しいのか」
この男はどうにも好きになれない。そう思ったときだった。
「貴方、どうかしまして」
「ああ、エーリカ、なんでもない」
いつの間にか彼女が傍に来ていた。心配そうな表情をしている。もしかすると何か感じて此処へ来たのかもしれない。そういう面では鋭い女だ。
「これは、奥様、ワルター・フォン・シェーンコップです。以後お見知りおきを」
そんな名前は憶えなくて良い、思わず心の中で罵った。しかもシェーンコップはエーリカの手を取って口付けした。わざとらしい振る舞いだが嫌になるほど様になっている。喧嘩を売っているのか、この野郎。
「初めまして、シェーンコップ中将」
エーリカは口付けされた事に少し驚いたようだったが、微かに笑みを浮かべて答えた。シェーンコップの方が中将と呼ばれて驚いている。
多分こいつは要注意人物で監視対象なのだろう。さり気無い一言で、相手に釘を刺すか。相変わらず頼もしい限りだ。だがシェーンコップもしぶとかった。直ぐに不敵な笑みを浮かべた。
「総督閣下、先程の感謝の件ですが……」
「……」
「如何でしょうな、奥方とのダンスをお許しいただきたいのですが」
エーリカとダンスだと! 馬鹿か貴様は。俺だって未だ一度も踊っていないのになんだって貴様が踊るのだ。いや、大体エーリカはダンスが出来るのか、彼女が踊っている所など一度も見たことが無いが……。
「シェーンコップ中将、お誘い有難うございます。でもファーストダンスとラストダンスは主人と踊る事にしておりますの」
エーリカは俺を見て柔らかく微笑んだ。シェーンコップが微かに残念そうな表情をした。
「そういうことだ、シェーンコップ中将。先ずは俺とエーリカが踊るのを待つのだな。では奥様、一曲お相手を願おうか」
俺はエーリカの手を取ると、ホールの中央に向かって歩き始めた。残念だったな、シェーンコップ。俺はエーリカの夫なのだ、俺を差し置いてダンスなど絶対に許さん。軽やかな笑い声が俺の口から出た。
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