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異伝 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(ヴァレンシュタイン伝)
困ったチャン騒動記(3)
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、ニードリヒ、ゾンダーク、ブラウヒッチ、アルトリンゲン、エーリカの艦隊の指揮官たちだ。イエーナー、ニードリヒ、ゾンダークは元々ケスラーの下で分艦隊司令官を務めていた。ブラウヒッチ、アルトリンゲンは陛下の直属部隊だったが、エーリカの下に配属されている。

「ベルゲングリューン、随分と盛況だな」
「……」
「……ベルゲングリューン、随分と盛況だな」

「は、はい、やはり総督閣下と副総督閣下が出席なされるという事で随分と人が集まったようです」
「そうか」

ベルゲングリューン、頼むから俺の前でエーリカに見とれるのは止めろ。俺は一応、いやとりあえず……、何でも良いが俺はエーリカの夫なのだ、不謹慎だろう。俺は嫉妬深い夫ではないし卿が信頼できる男だと知っている。

だから卿を補給基地に、オーベルシュタインの下に送ってやろう等とは考えん。だがな、もしオーベルシュタインの下に就けられたら、あの義眼が最初にやる事は卿の髭をそる事だぞ。髭が無くなったら誰も卿の事をベルゲングリューンだとは気づかなくなるがそれでも良いのか?

あの男はむさい男が嫌いなのだ。レンネンカンプが何かと割を食ったのもその所為だし、イゼルローンでゼークト提督を見殺しにしたのもゼークトがむさい親父だからだ。陛下に近づく男たちに敵意を隠さないのも実はあの男が美少年好きの耽美主義者だからに他ならない。

おまけにどうしようもない変態で陛下を苦しめてその悶え苦しむ姿を見て喜んでいた。あの男は冷徹非情なのではない。冷徹非情な振りをしてむさい男を落とし入れ、陛下に近づく男を蹴落とし、陛下を苦しめて楽しんでいたのだ。今は補給基地に飛ばされ性格は以前よりさらに歪んでいるだろう。ベルゲングリューン、あの男の下に行きたいか?

一人の軍人がこちらにやってきた。敬礼をするとエーリカに話しかける。
「副総督閣下、本日の会場警備を担当するエーベルシュタイン少佐です」
「ご苦労様です、エーベルシュタイン少佐」

「現在の所、会場、ホテル周辺にも特におかしなところはありません」
「分かりました。何か異常が有りましたら私達に遠慮はいりません。適宜と思われる処置を取ってください。宜しく御願いします」
「はっ」

あれは憲兵隊だな、戻って行くエーベルシュタイン少佐を見て思った。まあ国内の治安維持はお天気女の担当だからエーリカに報告するのはおかしくは無い。しかし俺には何も無しか? おまけに帰り間際に変な目で俺を見たな。多分俺の事をエーリカを苛める悪い夫だと思ったのだろう。

勘違いするなよ、俺はエーリカに何度もしてやられている可哀想な男なのだ、着せ替え人形ごっこも一緒に風呂にも入っていない……。これからは外に出るときはエーリカと出来るだけ一緒にしよう。あいつら俺だけだと警備の手を抜きかねん。
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