第三十二話 太子の焦燥その六
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「違うかしら」
「常に国と民の為に動かねばならないからこそ」
「その筈よ」
「そういうことではなく」
「滋養にというのね」
「その意味でお話しましたが」
「それなら取っているわ」
そいうした意味ではとだ、マイラも答えた。
「しっかりと」
「それは何よりです」
「滋養にいいものも口にしているし」
「大蒜や生姜を」
「そうしているわ」
しっかりと、というのだ。
「ミルクも飲んでいるしチーズもね」
「召し上がられていますか」
「そうしたものをよく食べているわ」
「そうですか」
「貴女の気のせいではないかしら」
顔色が悪い、そのことはというのだ。
「それは」
「そうですか」
「休んで身体にいいものも食べて」
マイラはさらに言った。
「あの方が帝国から取り寄せてくれる霊薬も飲んでいるわ」
そちらもですか」
「ええ、だからね」
それで、というのだ。
「今はそう見えても」
「必ず、ですね」
「元の様に見えるわ」
「では」
「貴女は心配しなくていいわ」
こうマリーに言う、しかし語るその目の光を見てだ。マリーは不安にならずにいられなかった。それで側近達に対してこう言った。
「お姉様はどうも」
「はい、近頃です」
「日に日にお顔の色が悪くなってきていますね」
「やつれてこられています」
「目の光も弱くなってきています」
「お父様達と同じ様に」
あえてだ、マリーは三人の王達に言及した。
「なってきていますね」
「お顔の色が悪くなってきて」
「やつれていき」
「目の光も弱くなり」
「そうして、でしたね」
「そうなっていくのでしょうか」
マリーは危惧を語った。
「お姉様も」
「そうしたお考えは」
「やはり持たれぬ方がいいです」
「どうしても」
「そうしたものは」
「若しもです」
ロドネイ公がここでマリーに言った。
「マイラ様に何かあれば」
「その時はですね」
「もう太子はです」
「そうですね、伴侶がいなくなり」
「この国におられる意味がなくなりますね」
「そうなります」
その通りだとだ、マリーも答えた。
「そしてです」
「この国を去られる」
「そうなります」
「では」
「我々にとってはですか」
「いいかも知れないかもと」
「それは国益から考えますと」
マリーはあえて言った、だが。
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