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Three Roses
第三十二話 太子の焦燥その五

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「我々はこの国から去る」
「そうせざるを得ないからこそ」
「そうされるのですね」
「そうだ」
 まさにというのだ。
「その場合は仕方がない」
「お妃様がおられないと」
「それではですね」
「我々はこの国にいる理由がなくなる」
「それ故にですね」
「去るしかない」
「そうするしかないですね」
「だから妃には生きていて欲しいが」 
 政治的にだ、太子はそうした見解からマイラを見て大事にしているのだ。ロートリンゲン家の者として、である。
「だが、だ」
「それでもですね」
「若しもの場合はですね」
「去るしかない」
「そのことも覚悟しておきますか」
「どうも日増しにだ」
 マイラのその表情を思い出して言った。
「顔色が悪くなっていっているからな」
「何の病かわかりませんが」
「エヴァンズ家は早世される方が多いですし」
「これまでは男子の方ばかりでしたが」
「お妃様もエヴァンズ家の方」
「それならbですね」
「そうだ、早世してもおかしくはない」
 エヴァンズ家、早世の者が多い家の者であることは事実だからだ。
「そのことは今まで深く考えてこなかったが」
「覚悟しておきますか」
「そしてそうなった場合についてもですね」
「どうするか考えておく」
「そうしていきますか」
「どの様な事態も前以て考えておきだ」
 そのうえでというのだ。
「常に対することが出来る様にしておく」
「太子の政治へのお考えですね」
「それではその時もですか」
「今から考えておきますか」
「そうされますか」
「是非な、しかし最善は妃に生きていてもらうことだ」
 太子はこの考えも述べた、やはり政治的な見解によるものだ。
「帝国本土からまた薬を取り寄せるか」
「霊薬もですね」
「そういったものも」
「そうだ、元気になってもらう」 
 ロートリンゲン家がその富と権勢を使って集め作らせたりした薬をだ、太子はマイラに飲ませようというのだ。
「是非な」
「それではですね」
「そうしてお妃様には元気になって頂いて」
「お子を」
「何があろうとも」
「もうける、その為に来ているのだからな」
 太子は強い声で言った、そして実際にだった。
 帝国本土から様々な霊薬を持ってこさせマイラに飲ませた、しかしマイラは日一日と顔色を悪くしていった。
 マリーから見てもだった、マリーはマイラと王宮の中庭で会い話をしている時に彼女のその顔を見て怪訝な顔で問うた。
「あの」
「何か」
「お顔が優れないですが」
「そうかしら」
「はい、お休みになっておられますか」
「休む。王家の者にそうした時はない筈よ」 
 マイラはこうマリーに返した。
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