第三十二話 太子の焦燥その四
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「人の運命は全て神が決められている」
「予定説ですね」
「確かそうした名でしたね」
「全ては神が決められている」
「そうした説でしたね」
「私は信じていない」
太子はこう前置きもした。
「それは違う」
「はい、そこまではですね」
「神も定められていませんね」
「そこまで強くは」
「運命の全てを」
「そうだ、そこまではだ」
まさにというのだ。
「神は定められてはいない」
「その通りです」
「幾ら何でもです」
「運命の全てが既に決まっているなぞ」
「幾ら何でも」
「人は己の考えで動き善も悪も為す」
太子は言った。
「そうしたものだからだ」
「そこまではとても」
「ある筈がないです」
「そう思いますと」
「予定説は違いますね」
「間違っています」
「新教の中でも最も厳格というが」
新教といっても色々とあるのだ、この国の新教もあればこの帝国の新教もありその宗派もあるのである。
「違う、しかしだ」
「死はですね」
「どうしてもですね」
「避けられないですね」
「それに至る病についても」
「避けられないですね」
「避けられる時もあるがだ」
しかしというのだ。
「避けられない時も多い」
「その通りですね」
「そしてそれは、ですね」
「我々もですね」
「我々についても」
「当然私もだ」
太子もだ、死についてはこう言った。
「やがては死ぬ、不老不死というが」
「錬金術師や魔術師達が言う」
「それはまことでしょうか」
「時折我こそがという者がいますが」
「しかしですね」
「それは、ですね」
「私は信じていない、あるかも知れないがだ」
不老不死の霊薬、それがというのだ。
「しかしだ」
「それは、ですね」
「大抵は山師が言っていることですね」
「所詮は」
「そうしたものに過ぎないですね」
「そうだ、これまで多くの王侯貴族が求めたが私も欲しいにしてもだ」
こうした感情はあるが、というのだ。
「しかしだ」
「得られるものではない」
「そうだというのですね」
「そうだ、私はだ」
所詮はというのだ。
「そうしたことはしない」
「富を使い求められることは」
「それはされないですか」
「そんなことをしてもだ」
「得られない」
「そうなのですね」
「そうだ、私は死にたくないが死ぬ時はだ」
その場合はというと。
「仕方ないと思っている、そして妃もだ」
「何かあれば」
「その時はですね」
「受け入れるしかない」
「そうなのですね」
「結局は」
「その場合はこの国と盟友のままだが」
それでもというのだ。
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