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八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
第百一話 長崎へその六

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「無念でした、その時は」
「ううん、畑中さんは剣道でしたね」
「九段です」
「では当時から剣道をされていましたか」
「そうでした」
「どんな稽古をされていたんですか?」
「実は直新陰流でして」
 流派も話してくれた。
「それの免許皆伝です」
「免許皆伝ですか」
「若い頃はそれを目指して精進ばかりしていたので」
「それで猛稽古だったんですか」
「一日二十キロは走り」
 何か凄い数字だった、マラソン選手なら少ないだろうが普通の運動部だと多い方だと思う。少なくとも尋常な距離じゃない。
「十一キロの木刀を千回以上振っていました」
「十一キロですか」
「最低でも千回でした」
「その木刀を、ですか」
「実はその木刀は振り棒といいまして」
「振り棒ですか」
「最低で千回、普通は二千回振っていました」
 何か無茶苦茶な話だった、十一キロの棒を二千回とかないと思う。二十キロのランニングでも普通ではないというのに。
「それを毎日してです」
「免許皆伝を目指されていて、ですか」
「見事習得しました」
「その頃のお話ですか」
「はい、幾ら食べてもお腹が空きました」
「そんな荒稽古をしていたら」
 流石にだ。
「そうなりますよ」
「その時のことです」
「ううん、相撲部の人も凄いですね」
「後に角界で横綱となられました」
「横綱さんと勝負されたんです」
「はい、そして敗れました」
「かえって凄いですよ、それに」
 その稽古のことをだ、僕は言った。
「直新陰流ですね」
「私の流派は」
「どっかで聞いたことがありますけれど」
「実は勝海舟が免許皆伝でした」
 意外な名前が出て来た。
「その流派の」
「じゃあ勝海舟もそんな稽古してたんですか」
「おそらくは」
「相当強かったんですね」
 気風のいい江戸っ子でざっくばらんかつ博識で頭脳明晰な人物というイメージがある、幕府の死に水を取った人だ。
「あまりそんなイメージなかったです」
「実は、です」
「そんな人だったんですね」
「当時は強い人が多かったです」
「剣道で」
「新選組然り」
「天然理心流ですね」
 新選組と聞いてこの流派の名前がすぐに出た。
「新選組は」
「近藤勇や土方歳三はそうでした」
「沖田総司も」
 新選組を代表する三人だ、この三人なくして新選組は語れない。
「そうでしたね」
「そして相当な強さでした」
「三人共免許皆伝で」
「北辰一刀流もありまして」
「その流派は」 
 畑中さんとお話をしていて自分の剣道への知識のなさを痛感した、日本人だというのにこれはと自分でも思った。
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