魔女と騎士兼旅人の物語
色彩の魔女は動けない。
××日 色彩の魔女
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で消える。それだけは明確に解っていた。
おかしな話だ。
少年は恐怖している。
なのに、冷静なのだ。
今すぐそこに、己の生命を断ち切らんとする「アレ」が居るのに少年は冷静に、「アレ」の動きを観察し、死から逃れようともがいていた。
無力な抵抗だとは分かっている。
でも、それでも、逃げ続ければ生きながられることが出来る。
なら、走ろう。
走り続けるのだ。
死から少しでも逃れるために少年は走るのだ。
立ち止まるな、「アレ」の脚は速い。
少しでも走る速度を緩めれば即座に距離を詰められる。だから走り続ける。
死から逃れるために走り続ける。
だが、徐々に「アレ」は距離を詰めてきた。
逃げきれない。生きられない。
触れられたら最後、少年は死ぬ。
最後まで足掻く。少年は藻掻く。
そして、その功は報われるのだ。
「ねぇ、何をしているんだい?」
その声と同時に「アレ」は炎に包まれていた。
その炎は魔法によるものだった。
全身を炎で覆われた「アレ」は動きを止め、この炎の原因を見渡す。
そして、その炎の原因を見つけ出した。
「帰ってくるのが遅いから心配したよ」
少年に歩み寄る美しい女性。
少年はこの女性を知っている。
普段はズボラで、不規則な生活リズムの女性を少年は知っている。
そして、少年は知っている。
その女性は魔女であり、少年の師匠であることを。
「で、あれはなんだい?」
普段と変わらぬ口調で師匠は言った。
「うん?
どうしたんだい。今にでも泣きそうな顔をして」
なんて笑みを零す師匠はこの状況を見ても驚きはしない。
「大丈夫、もう安心してくれ。
弟子の危機は私の危機も同然だ」
優しく微笑むその姿に少年は涙を零した。
『デュラハン』
騎士の成れの果てた末路。
前世は高貴な騎士だったんだろうけど。彼、戦で悲惨な最後を迎えたんだろうね。
左手の手首から先は無くなってる。
片足は根元から無い。あぁ、引き抜かれたって感じだ。
死因は首元から上の切断だろうね。
普通の人間なら致命傷だ。
そして、あの騎士は首から上を欲しっている。
なるほど、それで弟子を襲っていたのか。
それにしても、片足ないのによく馬に乗れたね。
デュラハンの乗っている馬も、それはそれは痛々しいものだった。
全身の皮は剥がされ、眼球は握りつぶされたのか、目元周辺には目玉だったものが潰れている。
うっ。さっきの炎は不味っ
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