魔女と騎士兼旅人の物語
色彩の魔女は動けない。
××日 色彩の魔女
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人が一番自覚しているが、それを解っていて言ってくる魔女は大っ嫌いだ。
さて、作業を始めよう。
扉を開くと、そこは別の空間だった。
部屋中に散らかった魔導書の数々。
本来、魔導書を置いてあったであろう本棚。
床一面に散乱した魔導書の紙切れ……。
これを全ての一人で片付けるのは骨が折れそうだ。
だが、やるしかない。
散らかったままだと魔導書の精製の邪魔になるし、来客を招くことも出来ない。それは唯識ことだ。
面倒だが、こればっかりは仕方ない。
夕方になっても、弟子は帰ってこなかった。
いくらなんでも遅すぎる。
綺麗になった部屋を後にし、私は家を出た。
この村の住民は太陽が沈むと寝るという習慣を持っているので村の皆はそろそろお眠の時間だろう。
そして明日の日の出に起床し、昨日と変わらない日常を始める。
なんて規則正しい生活なのだろうか。
私には到底真似できないし、理解できない生活だ。
そしてその生活リズムを最も忠実に守り、最も愛しているのが私の弟子だ。
その弟子が、夜になっても私の元に来ない。これは緊急事態だ。
弟子は朝、昼、夜に私の元にやってきて私の世話をする。そんな弟子が、昼と夜をサボるなんて考えられない。
そして、それを平然とやってもらっていた私自身は清々しい。
村の外に出るのは面倒だ。
だが、あんなのでも私の弟子だ。
なら、弟子の心配をするのは師匠の役目というものだ。
「さて、久しぶりにお散歩しますかね」
────ハァハァハァハァッ。
少年は走る。
夜の山を走る。
凸凹な足場で走りにくい。
なのに「アレ」は平然とやってくる。
逃げる。ただ、ひたすらに逃げる。
息が切れても、足が震えていても、頭から血を流していても、逃げる。
それは単純な本能だ。
死から逃れるようと必死に逃げる。
生き物は死を恐怖する。
何故、生き物は恐怖するのか?
それは至極単純だ。
生き物が、生きているからだ。
だから生き物は死を恐怖する。
少年は大地を駆ける。
死の恐怖に駆られ、涙を流しながら走る。
死を恐怖するのは生き物として当然だ。
故に、泣くことは恥ではない。
どんな人間でも痛みには耐えられない。
少年は「痛み」から逃げる。
アレは近付いては駄目だ。
本能が、そう訴えている。
近付けばそれだけで死ぬ。
なんで、そう思えたかは解らない。
ただ、アレに触れられた瞬間に少年の生命はそれだけ
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