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トシサダ戦国浪漫奇譚
第一章 天下統一編
第十二話 覚悟
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「安心しろ。俺は豊臣秀勝のような欲得で要求する訳じゃない。この話は豊臣家にとっても利となることだ。関白殿下も豊臣秀勝の時のように俺を罰することはない」

 俺の言葉を藤林正保と曽根昌世は信用できない様子だ。甥の豊臣秀勝が領地について不平を口にして改易されたことと、俺が伊豆国の知行安堵状を秀吉に要求することは状況が似ていると言えなくもない。だが、豊臣秀勝は個人の欲得で不満を口にしたのであって俺とは異なると思う。

「仮に利することとはいえ。関白殿下に勘ぐられる可能性があります」
「長門守殿の仰る通りです。殿は知恵が回ります。だから、小細工を弄して、自分の待遇を良くしようとしていると関白殿下に取られる可能性があります」

 藤林正保の話に同調して曽根昌世は自分の考えを話し出した。

「その可能性はあるな。言葉に気をつけ関白殿下に話を持ちかけてみる」

 藤林正保と曽根昌世の助言に納得した俺はどう秀吉に話を持ちかけようかと考える。

「それをお止めください。殿が色々と知恵を回らせ要求を通そうとすればするほど、関白殿下に余計な疑念を抱かせるかもしれません。事情をお話になり正面から要求され無理なら引き下がるべきです」

 藤林正保は俺を諫めた。

「そう言うものかな。話すにしても言い方一つで相手の印象は違うと思うのだが」
「今回の内容は関白殿下に真摯な態度で頼まれるべきです」

 次に曽根昌世が俺を諫めた。この二人は俺より人生経験豊富そうだから素直に意見を受け入れた方が良さそうだ。

「分かった。二人の意見は肝に銘じる」
「殿の身は殿だけのものではありません。多くの家臣の生活がかかっていることをお忘れ無きようにお願いします」

 藤林正保と曽根昌世は俺につめより念押ししてきた。二人とも真剣だ。確かに二人の言う通りだ。でも、俺と家臣全員の生活を考えれば伊豆国だけじゃ足りないと考えている。伊豆国には土豪もいる。全員領地を没収して俺の家臣達に分け与えることは無理だと思う。今後、統治を進めていく上で地元の土豪を全て潰すやり方は得策じゃない。そんなことをすればたちまち土豪達が一揆を起こしかねない。それを俺の家臣達だけ鎮圧することは無理だろうからな。潰すにせよ段階的に無力化して潰していかないと危険すぎる。

「重々分かっている。私は自分の欲得だけで無理をしているんじゃない。家臣達に満足な知行を与えてやりたいだけだ。この戦が終われば当分戦は無くなるだろう。今しか立身する機会はないのだ」

 俺は自分の気持ちを二人に正直に伝えた。この言葉に嘘偽りはない。
 俺は戦国の世を生き残るために頑張っていることは事実だ。だから、家臣も大勢必要なる。だが自分が生き残るためだけのために頑張っているわけじゃない。俺のために働いてくれる家臣の
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